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『あ……』
――なるほど。
彼女は納得し、心の中で頷く。
『《意識阻害》がかかってたんですね、通りで』
「あ……そっか。Aさん、触っただけで」
彼も彼で納得がいったようだ。つまるところ、その布は。
「こんなもん着けてたら、いやでも気になるじゃないですか。だったら、最初から気にならんようにってことで」
《精神》魔法の一種、《意識阻害》の魔石が混合された布であった。
そこにあるものから気を逸らす、あって当たり前のものとして馴染ませる。
つまり周りの人間は、彼が顔を隠しているという事実を気にしない――どころか、それ自体に気付かないという訳だ。
「Aさんは耐性があるから……え、てことは」
そこまで言って、ロボロはAをまじまじと見返した。
「今まで、気付いてて黙ってくれてたんですか……？」
『えぇまぁ……事情があるのかな、と』
「そ、やったんや」
今まで、その布に何らかの魔石が混合されていることだけは気付いていた。
ただ流石に触れないままで何の魔石なのかまでは分からなかったが。ちなみに、しんぺい神のもそうだ。
確かに誰も触れないなー、とは思っていたが、まさかそういう魔法だったとは。いやはや、勉強になる。
とAが内心頷いている正面で、ロボロは何かを決心したように、よし、と呟いた。
「Aさん」
『はい』
「絆創膏、お願いしても、ええですか」
『あぁ、はい――！？』
Aが目を瞠る前で、ロボロは頭の後ろへ手を回す。彼が何をするつもりか分かって、Aは人知れず唾を呑みこんだ。
やがてはらりと、二人の間に布が落ちる。
彼と彼女の、その間に。隔てるものがひとつ、なくなった。
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江之子(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます。頑張ります！これからもお楽しみください。 (2020年7月13日 16時) (
レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 藻塩。さん» コメントありがとうございます。気に入ってもらえる展開でしたか！作者も好きです、書くときちょっと辛くなりましたが…(笑) (2020年7月13日 16時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - コメント失礼致します。とても面白く読ませて頂いています。これからも更新頑張って下さい。 (2020年7月12日 19時) (レス) id: 8cc228e6cc (このIDを非表示/違反報告)
藻塩。(プロフ) - 江之子さん» コメ失礼します、すんごく展開が好きです…！これからも無理しないように頑張ってください！ (2020年7月12日 14時) (レス) id: 7b5f2afcc4 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 菜の葉さん» コメントありがとうございます。登場人物たちに感情移入してもらえるとは、この上ない褒め言葉です…！頑張ります。 (2020年7月11日 0時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月20日 23時
