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いつだったか、彼女が里帰りとかいう名目で村を空けた間の、いつかの夜だ。彼にたった一度だけ、相談をされた。
――貴族の娘と一緒になるには、どうすればいいですか。
わざわざ夜中にうちの玄関を叩き、少し言い淀んだ末に吐き出した、一言目がそれだった。
想像のやや斜め上をいった発言に、間抜けな顔を晒しつつ、事情を聞きだしたのをよく覚えている。
その頃には、彼女の不在により目に見えて不調を表す彼に、自分のみならず他の奴らも察しているところであった。
ただそれでも驚いたのは、彼が「彼女を諦める」選択肢を一切持ち得てはいないことだった。
身分違いの恋愛に、ただの面倒事では済まされないほどの障害が伴うことは、きっと彼だって分かっていたことだったのに。
それでも男はただ、彼女と共に生きられる術だけを、聞きに来た。
「えぇ、俺にだって分からんよ……。攫ってくればええんちゃう？」
「……」
自分が出した適当で投げやりな返答に俯いた男は、そこで諦めを感じたのかとも思った。
「でも、珍しいな。ショッピ君が、俺にこんなこと相談しに来るなんて」
煙草吸うか、と差し出した小箱は、ひとつ首を振って断られる。
「……そんなに、好きなん？」
「……。はい」
素直に首肯したことに、また驚いた。ここ最近の彼には、よく驚かされる。
「はぁー……気付かんかったわ。んでも、いつから？ そこまで本気になるような雰囲気、感じんかったけどなぁ」
その言葉は、揶揄い半分でただ言ってみただけだ。断られて、仕方なく自分だけ咥えた煙草に火を付ける。
ふぅ、といつも通り吐き出した紫煙が、目の前でくすぶって、それから消えた。
「いつからとかじゃ、ないんで」
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クロエ(プロフ) - ありがとうございます！！！！！！ (10月8日 4時) (
レス) id: 3d0234bb1d (このIDを非表示/違反報告)
クロエ(プロフ) - どうしてこの話がまだまだ伸びないのか疑問すぎる！！なんだか分厚い辞典でこの小説欲しいくらいなんか好きです！！！！！！最初の出会いからこの話の終わりまでずっとニマニマしちゃって覚醒の時なんかボロボロ泣いちゃいました！！めっちゃいい話を書いてくれて (10月8日 4時) (レス) @page33 id: 3d0234bb1d (このIDを非表示/違反報告)
妖々梅雨里(プロフ) - 最初から、最後まで。主人公の感情にこちらも身を乗り出してしまうかと思うくらい入り込めました。最後にはつい感極まって泣いてしまいました。素晴らしい作品をありがとうございます!!! (2021年12月25日 23時) (レス) id: f5b2ce54f6 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - とても素敵な物語でした…語彙が乏しいことにここまで後悔する日が来ようとは…!!1冊の小説を読んだ気分です。本当に本当に素敵な物語をありがとうございました！！ (2021年4月6日 23時) (レス) id: 31e2beb33a (このIDを非表示/違反報告)
つ旦(プロフ) - ここ最近で一番作品の世界にのめり込んでしまいました。距離感や環境に心温まり、ストーリーを読むにつれて心満たされていく感覚が最高でした。素敵な作品を書いてくださり本当にありがとうございます。 (2021年2月1日 17時) (レス) id: 4806c4a672 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年6月25日 2時
