恋人役−９ ページ9
＜Yuzuru Side＞
「そんな都合のいい子がいるわけ……」
言いかけた佳菜が、はたと口を噤む。
「なんだよ？」
「いや……、いるかも」
「はあ？」
最近、職を失った佳菜の幼馴染。ひととおりの家事はできて、料理はプロ級。喘息の妹さんがいたから、そのあたりの知識もある。さらに俺は外見も性格もその子の対象外らしい。
「すごくいい子。口も堅いし、信頼できるよ。―――紹介しよっか？」
「…………………」
かなり心惹かれる話だった。
女子が言う「口も堅いし、信頼できる」とか「すごくいい子」は、話半分なところがあるけど、佳菜はそういう口先だけの誉め言葉は言えない奴だ。
「……頼んでいい？」
「うん、ちょうど明後日会うから、話しておくよ」
「あのさ、俺の名前は……」
「わかってるって。彼女が話に乗ってこなければ、ゆづの名前は出さない。私に任せておいて」
まるで飲み会をセッティングするような軽さで請けあう佳菜に、俺は一抹の不安を覚えた……。
会う段取りがついたのは、それからすぐだった。
予約した日本懐石のお店は老舗で値は張るけど、店員の教育がしっかりしているから口外される心配がない。
パッと目立つタイプではないけど、わりと可愛い子だった。
長めのショートヘア、黒目がちな大きな瞳、形のいい唇。身長は１６０センチ前後で華奢な体つきだけど、白い肌にバラ色の頬が健康的な印象だ。
本当の恋人ではないから容姿は気にも留めていなかったけど、一緒に暮らすのだから生理的に受け付けないタイプじゃなくてよかった。
目を真ん丸に見開いて、俺の顔を穴があくほど凝視している。これは、会う前に俺の名前を彼女に伝えていない佳菜が悪い。
それでも佳菜が声をかけると、落ち着いた様子で席に座った。
すごく驚いたはずなのに騒がず、佳菜に詰め寄ることもしない彼女を好ましく思う。
二人きりになると、部屋が沈黙に包まれる。花沢さんが気まずそうにしているのがわかって、俺から話しかけることにした。
だいたいの事情は佳菜から聞いていたようだけど、自分の言葉で重ねて説明する。
花沢さんは受けるべきか、悩んでいるようだった。悩んで当然のことだし、“羽生結弦”の名前に飛びついてこず、真剣に悩んでいる姿は俺の彼女に対する評価を上げた。
花沢さんが出してきた条件は、三つだけ。
家族云々はなにやら訳ありっぽいけど、他人の俺が立ち入るべきじゃない。
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エミル(プロフ) - MERさん» MERさん、ご指摘ありがとうございます。気を付けます (2021年7月14日 23時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
MER - 所々美百合さんになってますよ (2021年7月14日 22時) (レス) id: 39acd1ff39 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、初めまして。コメントありがとうございます。わくわくするって感想、とても嬉しいです♪羽生さん、大人っぽいですかね？今後も楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2021年7月12日 20時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - はじめまして！斬新な設定にわくわくしています＾＾ここの羽生さんはとても大人っぽいですね。大人な羽生さん大好きなので、嬉しいです！更新頑張ってください！ (2021年7月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年7月10日 18時
