恋人役−８ ページ8
＜Yuzuru Side＞
家族は知らないだけで、俺だって恋人がいたこともある。
平昌オリンピックが終わった後、これまでより肩の力を抜いてフィギュアスケートと向き合おうとしていた頃に出会った、トロントで日本語教員として働く三つ年上の女性。
誰もが振り返るような美人で、高嶺の花の雰囲気を持つ彼女を俺は夢中になって追いかけた。
今、思えば、二連覇したことでスケートに対するモチベーションの方向性を失っていた俺は、彼女を追いかけることで行き場を失った情熱を保とうとしてたのかもしれない。
手に入れた彼女を大切にしたい気持ちはあったし、浮かれていた俺は結婚すら考えていた。
でも、世界選手権で敗北し、持ち前の負けん気に火が点いたことで、彼女との仲は上手くいかなくなり始める。
スケートを一番に考える自分を彼女は理解しなかった。スケートと自分を秤にかけるような態度をたびたび取られて、うんざりした。おまけに、スケートより自分を優先しろと言うわりには、試合に勝つことを要求される。強い“羽生結弦”に惹かれているだけなのだと、彼女の心が透けて見えたとき、自分でも驚くほど急速に冷めた。
別れたいと告げた俺に、彼女は激高して、納得させるまでにものすごい労力を費やした。
恋愛はこりごりだと俺に思わせるには、充分すぎる経験。
現役でいる間、俺に恋愛は無理だ。好きな人の醜い部分を見せられるのも怖いし、受けとめる自信もない。
次の日、仕事の都合で仙台に来ていた佳菜と会う機会があった。
あんまりプライベートなことは話さない性質だけど、帰国して以来家族以外と口を利く機会がめっきり減り、誰かに聞いてもらいたい気持ちがあったんだんと思う。佳菜に母親と姉の会話のことを愚痴っぽく言ってしまった。
―――すげー大笑いされた。
大口を開けてケタケタ笑う佳菜を前に、人選を間違えたと唇を噛む。
「ゆづは考えすぎなんだよー。さっさと彼女作っちゃえばいいのに」
「だーかーら、それが無理なんだよ、俺は」
「…………本当に女性に興味がないの……？」
「違うわ！！」
やっぱ、佳菜に話したのは失敗だった。
「あーあ、恋人のフリしてくれるロボットでもあればいいのに。昔、そういうドラマなかったっけ？」
ついでに、家事や料理も完璧で、リンクまでの送迎もしてくれて……俺に面倒な感情を持つこともなくて。
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エミル(プロフ) - MERさん» MERさん、ご指摘ありがとうございます。気を付けます (2021年7月14日 23時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
MER - 所々美百合さんになってますよ (2021年7月14日 22時) (レス) id: 39acd1ff39 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、初めまして。コメントありがとうございます。わくわくするって感想、とても嬉しいです♪羽生さん、大人っぽいですかね？今後も楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2021年7月12日 20時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - はじめまして！斬新な設定にわくわくしています＾＾ここの羽生さんはとても大人っぽいですね。大人な羽生さん大好きなので、嬉しいです！更新頑張ってください！ (2021年7月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年7月10日 18時
