ボーダーライン−3 ページ31
「言っただろ。Aなんか力でどうとでもできるって」
驚きすぎて、身体が動かない。
吐息がかかりそうなぐらい近くにある結弦くんの顔はこんなときでも見惚れるぐらい綺麗だけど、その目には凄みがあった。
「……だ、だめだよ。恋愛感情は持たない条件でしょ」
なんとか声を絞り出して反論すると、結弦くんの口元が弧を描く。
「べつに恋愛感情なくても、男はやれるよ?」
「………………」
「俺の身の回りの世話をするだけで生活させてもらえると思った? 考えが甘すぎるんじゃねーの」
耳元に顔を寄せて、囁かれる。
結弦くんの手が私の腰を引き寄せてきて―――
「ダメ……っ」
――――――――ドカッ……!
頭頂部に激しい痛み。目を開くと、チカチカと星が飛んでいる……。
星が消えた後には、いつもの天井があった。
どうやら眠っているうちに、ベッドでずり上がって、フレームに頭を打ち付けたらしい。
………あろうことか、私はとんでもない夢を見てしまった。
これでは、まるで襲われる願望があるみたいじゃないの。
いやいや、あんな破壊力あるものを見せつけてきた結弦くんのせいだ。同棲の条件に「裸族禁止」を付け加えてもらおう。
相当寝相が悪かったのか、ボサボサになった髪の毛に手をやると、指も通らない有様で。
あくび代わりに漏れるのは、吐き果てないため息―――
「A、ひどい顔してる」
ダイニングテーブルに座って、テレビを観ていた結弦くんは入って来た私を見るなり、笑う。
誰のせいだ? と、言い返したいところだけど。言えるはずもないので、黙ったまま彼の前に座った。
すると、じっ……と、思わし気な瞳で結弦くんが見つめてくる。
「……なに?」
「ううん。昨日、ずいぶんうなされていたみたいだから、大丈夫かなと思ってさ」
「え、嘘。……あの、なんて言ってたか聞こえた……?」
一気に冷や汗が出て、私はおそるおそる尋ねた。
「なんか、やめて、とか、ダメ、みたいな声が聞こえたけど……」
「……………………」
恥ずかしすぎて、気が遠くなりそうになる。
「ただの夢ならいいけど。もし、なにか悩みとか不安なことがあるなら、俺でよければ話を聞くよ?」
本気で心配してくれる結弦くんの優しい瞳に、私は自己嫌悪で死にたくなった。
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エミル(プロフ) - MERさん» MERさん、ご指摘ありがとうございます。気を付けます (2021年7月14日 23時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
MER - 所々美百合さんになってますよ (2021年7月14日 22時) (レス) id: 39acd1ff39 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、初めまして。コメントありがとうございます。わくわくするって感想、とても嬉しいです♪羽生さん、大人っぽいですかね?今後も楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年7月12日 20時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - はじめまして!斬新な設定にわくわくしています^^ここの羽生さんはとても大人っぽいですね。大人な羽生さん大好きなので、嬉しいです!更新頑張ってください! (2021年7月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エミル | 作成日時:2021年7月10日 18時