契約−９ ページ28
＜Yuzuru Side＞
『ならいいんだけど。勢いでAを紹介したけど、まさかこんなに早く本当に同棲までいきつくと思ってなかったから、私にとっては意外な展開だったんだよね』
『は？ なんだよ、それ』
『ゆづは決めるのも行動も早いけど、Aはどっちかっていうと慎重だし優柔不断なところがあるから。……まさかと思うけど、無理強いしてないよね？』
『……していない、と思う』
Aは迷っていた。それを了承するように誘導した自覚はあったから、強く断言できなかった。
『まー、あの子も生活がかかっていたし……。名古屋から離れたがっていたから、ちょうどいい転機だったのかも』
『名古屋から離れたいって、なんで？ ―――もしかして、家族と関係ある話？』
そういえば、Aは生まれ育った地元を離れるのに、一切躊躇がなかった。俺なら、仙台を離れることは考えられない。
『……Aから聞いてる？』
『いや……。家族の話はしないって彼女から条件が出てる』
『そっか、じゃ、私も言えないな』
佳菜が当然の反応をしてくるけど、
『本人には話さないから、教えてくれない？ 仙台へ来ることも親に言っていないみたいで気になる』
俺は引き下がらず、お願いしてみる。
『聞いてどうするの？』
『え？』
『ゆづは同居人であって、恋人じゃないでしょ。彼女の問題に首を突っ込んだって、なにもしようがないじゃない。それなら、知らない方がよくない？』
『……、……それは……』
正論だ。
彼女の領域に踏み込むべきじゃないし、そんな権利もない。条件を破ることにもなる。
『わかってるけど……。Aが何か問題抱えたり悩んでいるなら、見過ごすなんてできない』
一緒に暮らしていくのに、知らんぷりするの？
『……A、ね……』
ぽつりと、思わせぶりに佳菜が呟く。
『優しいゆづらしいけど、中途半端な気持ちで踏み込まないであげて。口を挟めるのは、Aと一緒に生きていく覚悟がある人だけだよ。佳菜はそう思う』
『……………………』
一緒に暮らすだけでなく、一緒に生きていく覚悟。
反論できなかった。
俺にとって大切なのはスケートと家族。常にそこは譲らずにやってきたし、これから先もそうだ。少なくとも、現役でいる間は。
佳菜の言うとおり、俺のAに対する気持ちは中途半端な優しさ。
いや、自己満足かもしれない。
難しいな。一番近くで過ごしていても、心の距離は違う。
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エミル(プロフ) - MERさん» MERさん、ご指摘ありがとうございます。気を付けます (2021年7月14日 23時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
MER - 所々美百合さんになってますよ (2021年7月14日 22時) (レス) id: 39acd1ff39 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、初めまして。コメントありがとうございます。わくわくするって感想、とても嬉しいです♪羽生さん、大人っぽいですかね？今後も楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2021年7月12日 20時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - はじめまして！斬新な設定にわくわくしています＾＾ここの羽生さんはとても大人っぽいですね。大人な羽生さん大好きなので、嬉しいです！更新頑張ってください！ (2021年7月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年7月10日 18時
