猫 赤 ページ16
Aside
「あ、猫や〜」
暖かな春の陽気に眠くなりそうな今日この頃。ていうか眠い。
恋人の誠也くんはまだ寝ている。そりゃあまだ朝の5時だから。今日は何故か偶然目覚まし無しでこんなに早い時間に起きてしまった。
ベランダと部屋を繋ぐ窓のところに腰をかけていると、どこから来たか分からない野良猫がこちらに来た。毛が短くてしっぽが長い。こちらに怖がる様子は全くなく、私の脚に顔をスリスリしてきた。
「かわええなぁ」
頭を撫でてやると気持ちが良いのか喉をゴロゴロと鳴らす猫さん。可愛い。
まるで、
「誠也くんみたい」
後ろからガタっという物音がして後ろを振り返るとそこには誠也くんがいた。
「俺がどしたん？」
まだ起きたばかりで完全に目が開いていない誠也くんがそこに立って私にそう聞いた。
「おはよ。この猫が誠也くんみたいやな〜って思って」
私はそう言って猫さんを持ち上げて誠也くんに見せる。ブランケットを羽織った誠也くんがその猫を抱き上げる。どっちも可愛い猫みたい。
「かわい。似とるかな？」
とあざとい顔をしながら私の方を見る。
「そっくり」
誠也くんはふにゃりとした笑顔を見せてその猫を離す。
「俺と猫、どっちがかわいい？」
「っふ、わかってるくせに」
誠也くんはしゃがんでそっと私を包み込む。そして座っていた私の手を取って
「つめた。あったかいもんのむ？」
と寝起きで回らない頭をフル回転させて気を使ってくれた。
「ええよ、私がつくるから。ココアでいい？」
「ありがとぉ」
誠也くんはソファに座ってブランケットに包まる。
「やっぱ猫さんやなぁ」
「んふ聞こえてるで」
「地獄耳猫さんや」
まだ働かないぽやぽやとした頭でお互い会話しているため、何を言ってもぽやっとしかしない。
朝はそれが逆に良いのだ。
暖かいココアを2杯、誠也くんが座っているソファの方に持っていくとまだあの猫さんがこちらを覗いていた。
「まだおったんやなぁ」
「多分俺に親近感わいとる」
「そういうことね、笑」
「これからはあの猫さんに俺たち見守ってもらおか〜」
「猫神様的なね笑」
猫さんは私たちの発言を聞いて見守ってるよと答えてくれたのか、にゃあとひと鳴きした。
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作者名：晴 | 作成日時：2022年11月29日 19時
