6人に愛されてみませんか？【短編集】 (ページ12)

今日:1 hit、昨日:16 hit、合計:40,776 hit

・ページ12

Aside

取引先から会社に帰る途中の道。取引先の感触も良かったし、今日は夕飯贅沢しようかななんてルンルンで歩いていた。

ふと地面を見ると、しおりが落ちていた。
そのしおりを手に取ると、
「シロツメクサ…？」
私が持っているのと似たようなしおりで小さなシロツメクサの押し花だった。

急いで前を歩いていた人を追いかけて話しかけた。
「これ落とされませんでしたか？」

その人は振り向いて深々と礼をしてきた。
彫りが深くて端正な顔。長身でモデルさんみたい。

「ああ、すんません！て、あれ？Aちゃん？」
「え？」
「俺やで！覚えてへん？小島健」

目の前の知らない人だったはずの人から、知っている名前が発される違和感。私よりも身長が低くて、弱っちい感じだったくせに。昔から顔が整っていて、周りの女子からイケメンって言われたら泣いてたくせに。

「覚えて…へんか！まぁ昔のことやしな」
「いや！覚えてはいるけど…なんか健くん変わったね…大きくなったっていうか…」
「そりゃ歳重ねれば大きくなるやろ笑」
「そうだよね、笑」

健くん、なんだ。
健くんがシロツメクサを持っていてくれて嬉しいなぁ

「なぁ、今時間ある？」
「うん。あるけど、？」
「そこのカフェでお茶でもせん？」
「なんかナンパみたいだね笑いいよ」

カフェに向かって歩き出した健くん。
弱々しかった背中は、頼もしい背中に成長していて、なんだか寂しさを感じた。
スタイルよすぎ、輝いてる。横に並んで歩くのはなんだか申し訳ない気がして、そのまま後ろを着いていった。