陽だまり ページ10
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──それから、暫く私の周りは騒がしかった。
先ず、町の人で体力のある人が何人か、山の家の様子を見に行った。私も行くと言ったのだけど、皆に止められてしまった。
曰く、家族の死体を子供に見せる大人はいない、とのことだ。
彼らによれば、家の中は血が飛び散って、それは悲惨なことになっていたらしい。けれど死体が転がってるようなことはなく、家の周りに五つの小山が出来ていたと言っていた。
その話を聞いて、私は彼がやってくれたのだろうか、と思った。
ウチは父さんが死んでからは八人家族で、そうなると遺体は二人分足りないことになる。まだ生きてるのでは、捜索隊を構成するべきだ、という皆の提案を断って、その話は終わりにさせてもらった。
……彼が“鬼”という生き物について説明してくれたのでなかったら、私もその可能性に縋ったかもしれないけど。
聞いてしまった今は、
町の人には、鬼について何も言えなかった。信じてもらえるか分からなかったし、広めていい知識なのかも分からなかったから。
打ち明けられたのは、先生だけで。
気が触れたと、もしくは作り話だと思われるかもしれない。引き取ってくれるという話も、撤回されるかもしれない。それでも、私は彼から聞いた全てを話した。
先生は、「そうかい」と一言だけ呟いて──それから、何も言わなかった。否定することも、なかった。
そして──その一ヶ月後。
「Aちゃーん。ご飯の支度をお願いしてもいいかしらー?」
「はーい! お任せください!」
私は先生の姓を貰って──安田Aとなっていた。
***
カラン、カランと。耳飾りが、慌ただしく揺れる。
「は、は……信乃さん! 隣の牧野さんからお裾分けです。美味しそうな煮物ですよ!」
「あら、本当に美味しそうねぇ。今日の晩ご飯はこれで決まりね。ああ、そうだAちゃん。洗濯物を取り込みたいから、お手伝いを……」
「手伝いも何も私がやります! 信乃さんは安静にしててください!」
私は彼女に上着を被せて椅子に座らせた。そのお腹は大きく膨らんでいて、先生の見立てが正しければ、“もうすぐ”の筈だ。
「ふふ、こんな頼り甲斐のあるお姉ちゃんが出来て、嬉しいわ」
信乃さんはそう言って柔らかに笑った。
まるで陽だまりのような。温かな幸せを感じさせてくれる笑みだった。
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ドジ猫(プロフ) - 絵宙(えそら)さん» 一応、炭治郎の髪ってことで炭治郎本人は数に入れてないです! わかりにくくてすみません!汗 (2020年3月30日 6時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
絵宙(えそら) - ページ5の「込められた想い」では、弟の数は、茂、六太、竹雄、炭治郎(漢字が違うかもしれません)で、四人だと思います。細かくてすいません。これからも頑張ってください!楽しく読ませていただいてます! (2020年3月30日 3時) (レス) id: 63faa5bcfc (このIDを非表示/違反報告)
由亜(プロフ) - とっても面白いですね!一気に読んじゃいました。寝転びながら読んでたんで、シーツの一部分になみだのしみが・・・(泣きました)これからlet's続編で御座います!面白い小説を有難う御座いました (2020年2月24日 4時) (レス) id: d2128f7714 (このIDを非表示/違反報告)
タートル(プロフ) - 失礼致します!面白くて一気に読んでしまいました!私も鬼滅のお話を書いているので良かったらお越しください。 (2020年2月19日 20時) (レス) id: 77bb05bd52 (このIDを非表示/違反報告)
ドジ猫(プロフ) - なるは。さん» ありがとうございます!嬉しすぎて顔がにやける……!これからもよろしくお願いします!! (2020年2月16日 22時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ドジ猫 | 作成日時:2019年12月19日 0時