秘められた謎 ページ23
.
(すごい、すごい、すごい──!!)
「ウギャァアア! ァァアアア!!」
赤子の鬼は、濁った声で喚き散らしながら腕を振り回す。風を切る音がここまで伝わってきて、私だったら掠るだけでも致命傷になるような、単調だからといって侮れない攻撃だった。
──そんな攻撃でも、羽ばたく蝶は捕らえられない。
「体躯が大きい所為で毒が回るのが遅い──その内に分解されるわ、姉さん!」
「任せてしのぶ! もう一度、一番強力な毒を打ち込んで! 分解される前に───私が頸を斬る!」
彼女たちの刀が振るわれる度、鬼の血飛沫が、斬り落とされた肉塊が宙を舞う。
それを、美しいと感じてしまうのは。彼女たちの技が、型が、極められたものだと分かるからだ。
まるで、父さんの舞うヒノカミ神楽のように。
しのぶさんの刀が鬼を突く。
鬼の動きが鈍る。苦悶の声が上がる。
カナエさんの刀が振るわれ──
「花の呼吸・肆の型──紅花衣!」
鬼の頸を、斬り裂いた。
***
「──っ、お二人とも、ご無事ですか!?」
頸を斬られた鬼の体が、再生することなく灰となって崩れていく。
事前に聞いていた通りだ。私は藤の香が炊きしめられた出口付近を離れ、二人に駆け寄った。
目立った外傷は──ない。ほぼ無傷だ。多少髪が乱れてるくらいで、衣服に付いた血も返り血だろう。
「とても強いんですね! お見事です」
「今回の鬼がそこまで強くなかったってのもあるけど……姉さんは鬼殺隊の中でも特に強い“柱”の一員だもの。ねえ、姉さん?」
「しのぶが毒を使って弱らせてくれたからよ。私だけの力じゃないわ。……だとしても、少し変ね」
渡した布で、カナエさんたちは自身の顔や刀に付いた血を軽く拭う。
二人の会話の中に出てくる不可解を、理解出来ないのは私だけだった。
「変、とは?」
首を傾げれば、カランと耳飾りが揺れる。ほんの少しの乱れた髪を結い直しながら、私の問いに答えてくれたのはしのぶさんだった。
「
「この状況……」
そう言われて、私は地下室の中をぐるりと見回す。
出口に焚かれた藤の香。
赤子の鬼。
隠されていた地下室。
殺された人の死体。
(……あの鬼、まるで──)
「ここで何をしているの!!!」
私の思考は、突如たる悲鳴に断ち切られた。
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ドジ猫(プロフ) - 絵宙(えそら)さん» 一応、炭治郎の髪ってことで炭治郎本人は数に入れてないです! わかりにくくてすみません!汗 (2020年3月30日 6時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
絵宙(えそら) - ページ5の「込められた想い」では、弟の数は、茂、六太、竹雄、炭治郎(漢字が違うかもしれません)で、四人だと思います。細かくてすいません。これからも頑張ってください!楽しく読ませていただいてます! (2020年3月30日 3時) (レス) id: 63faa5bcfc (このIDを非表示/違反報告)
由亜(プロフ) - とっても面白いですね!一気に読んじゃいました。寝転びながら読んでたんで、シーツの一部分になみだのしみが・・・(泣きました)これからlet's続編で御座います!面白い小説を有難う御座いました (2020年2月24日 4時) (レス) id: d2128f7714 (このIDを非表示/違反報告)
タートル(プロフ) - 失礼致します!面白くて一気に読んでしまいました!私も鬼滅のお話を書いているので良かったらお越しください。 (2020年2月19日 20時) (レス) id: 77bb05bd52 (このIDを非表示/違反報告)
ドジ猫(プロフ) - なるは。さん» ありがとうございます!嬉しすぎて顔がにやける……!これからもよろしくお願いします!! (2020年2月16日 22時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ドジ猫 | 作成日時:2019年12月19日 0時