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「もしもし？」
「…あ、横尾でーす」
聞こえてきたのは横尾さんの声で、北山先輩のスマホからかけているようだった。
「横尾…さん？」
「そだよー。あのね今からミツとご飯行こうと思ってて。」
「えっ、でも北山先輩って今地元に…」
昨日姿を見かけたばかりで、まだ先輩もこっちにいると思っていた。
「うん、いるよ。俺もこっち来たの。Aちゃんもいるはずだってミツが言ってたから」
多分横尾さんの隣にいるであろう北山先輩の声で「言ってねぇわ」と小さく聞こえる。
「えっと……、あの…」
まさか昨日の今日で、このタイミングで北山先輩と会うこと、それが可能だということに単純に驚いてしまったのと躊躇してしまうのとで言葉に詰まってしまう。
「だからAちゃんも誘ってご飯食べようよって。来れる？」
「いえ、でも…北山先輩、大丈夫…なんですか…？」
歯切れが悪くなりながら言葉を選んでそう言うと、横尾さんが小さく、ふふ、と笑う。
「…そうだよね。ミツに聞いてみるね、少々お待ち下さい」
…はい、ととりあえず返事をしてしまったものの、やっぱり断るべきかとまだ迷う。
少し小さくなる音量で、横尾さんが北山先輩に「Aちゃん、ミツ大丈夫なんですかって心配してるけど、大丈夫？やめとく？」と訊いているのが聞こえる。
よこーさんが無理に誘ってんでしょ、と少し元気のなさそうな先輩の声がして「無理にじゃないもん。」と答えた横尾さんに「Aが……いいなら」と返した先輩の声が小さく聞こえるから、つい「行きます」と返事をしてしまった。
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作者名：EM | 作成日時：2021年10月16日 3時
