Mirage 2 (ページ14)

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「……ごめんなさい、こんなときにする話じゃ、ないのに」

衣月先輩の命日が昨日だったこと、そしてそれが北山先輩にとってどれだけのことなのか、そんなことを考えられずに脈絡もない話をしてしまった自分に幻滅する。

いまさら、お酒がまわってきたかもしれない。

「…そうだよな。玉森も、つらいよな。」

手首に触れられた感覚に、振り返ると先輩が小さく言った。

「Aも。」

目を合わせてそう言うと、私に触れた手を離して、塀に腕を置きながら、遠く濃く暗い沖をみつめた。

冷たい月の光に照らされた北山先輩の横顔が寂しそうに、だけど痛いくらいに綺麗で。

「……ちゃんとできなくても、いいよ」

そう呟いた声が、潮風に乗って消えるように宙を舞った。

「Aー？ミツー？」

いつの間にか遠くに見える裕太が、私と先輩を呼ぶからすぐに手を振り返す。

「気遣ってくれてありがとう。こんな日にお前たち呼んだの、悪かったよな。ごめん。」

「…いえ、」

北山先輩がさっきよりもずっとはっきりとした声で言って、ポケットに手を入れながら裕太たちの方に向かって先に歩き出した。

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