【東京喰種】適当“半喰種”は美食家に狙われている。-serious story-《2》

＃51 [美花] ページ3

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「パパ！早く行こうよ！」


足下から急かすように、幼い声が聞こえた。

視線を落とせば、頬を膨らませて僕を見上げる少女が。

「ははは ごめんよ」

笑って頭を撫でると嬉しそうな笑みを浮かべる。そんな所も母親そっくりだ。

目的地が近づくにつれ、彼女は強く手を握る。


初めて見るから緊張しているのだろうか。

それとも、本当は来たくなかったんじゃないだろうか。


＿＿＿僕だって……


「着いたよ」

「ここ？」

「…ああ……」

いつかに君と来た花畑。
ここで僕たちは、泣きながら愛を誓ったんだ。

あの時の君の泣き顔が、言葉を失うくらい美しかったのを鮮明に憶えてる。


＿＿そこにぽつりと立つ、小さなお墓。


少女は僕の影に隠れて、恐る恐るといった表情で近づく。

「この中にママがいるの？」

「そうさ。君の優しいママで、僕の大好きな女性だよ」

過ごした日々を思い出せば、懐かしくもなるし悲しくもなる。


でも、もう泣かないって決めたんだ。


「馬鹿にされちゃうからね……」


微かに笑って、君が大好きだった花をそっと飾る。



“ツキミソウ”



君にぴったりの花だよ。

僕が買ってきたからって怒らないでほしいな。


「私もお花飾ってあげたい」


つくづく優しい子だ。

「ママにはね、“美花”っていうとっても綺麗な花が飾られてるんだ」

「“みか”って…私の名前だよ？」


「うん。




＿＿＿ママにとって
　 人生で一番素敵な花だったと思うよ」






〜fin〜

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