〃 ページ32
「妹はそちらで上手くやっているでしょうか……」
兄はそう言って、婚約者とおしゃべりの花を咲かせ始めた妹をちらりと見て目を細めた。
「まあ、それなりには」
義弟は苦笑して見せた。
男の自分がぞくりとしてしまうような、血色の瞳。紅を引いたような赤い唇が、色の少ない陶器のような白い肌に映える。
地の国から出てきた妖怪のようだ。
なるほど、話に聞くとおり女のようにも見える方だ。普通の男にはない、上品な色気が漂っている。
ふむ、彼も妹のお転婆には手を焼いていると見える。
結婚したら大人しくなるかと思ったが、寧ろ家を離れてのびのびと生きているように見える。
「妹が幸せそうで何よりです」
私はそう言って笑った。
解せぬ。
この男が妹にあんなことやこんなことを……ゲフンゲフン。
全くもって女性というものは普段は涼しい顔をしているもので、我が妹もそうなのだろう。
それが証拠に、隠しきれないしっとりとした柔らかな色気が香っている。
愛を受けているというか、大切にされているのがわかる。水をやって定期的に草を刈った庭とそうでない庭ほどにはわかりづらい。何が違うかと言われれば返答に困るほど些細な違いだ。
何も知らないのではなくて、何も知らない"フリ"をしているのだと思うと兄貴の心境は複雑だった。
「お兄様もご結婚されるのですね、ふふ」
Aは楽しそうに笑いかけてくる。
自分と同じサファイアのような色の瞳。絹の糸みたいに艶やかな金色の髪、白魚のように白い肌。桜の花びらのような唇が弧を描いている。
天から舞い降りてきた女神様のようだ。
「私が結婚するのがそんなに面白いか？」
「ええ、とっても。お兄様、おめでとうございます」
ふっと、柔らかく微笑む妹は、妹ではなくどこか母のようにも見える。
凛月に兄弟というのはたったひとりの兄だが、Aには姉がひとりと兄がふたりいた。
「お姉様、お久しぶり！ お会いしたかったわ」
そう言ってAは無邪気な笑みを浮かべて背の高い女性に近づいていく。
「A」
女性にしては低い落ち着いた声。容姿はよく似ているのに表情は対照的だった。声は誰も聞き違えない。
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さなえ(プロフ) - フラッペさん» コメントありがとうございます。お褒めに預かり光栄です。細かいところにこだわって書いてみました。 (2018年8月18日 16時) (
レス) id: b33fb32224 (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - お話の内容が濃くて私的には面白い物語でした。こういう細かな文章が好きで、なんか一つ一つに感情がこもっているというか……まぁ、とにかく良い話でした。 (2018年8月16日 1時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さなえ@Ｌｏｖｅ伊織 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sanaeHome/
作成日時：2017年7月29日 16時
