〃 ページ17
大変な拾い物をしてしまったよ、全く。
でも、お陰で何十年かは退屈しないで生きられそうだ。
凛月は優しい子じゃのう、と頭を撫でてくる幼い日の兄者のことを思い出して、凛月はぶんぶんと頭を降ってその幻影を振り落とした。
「凛月？」
その声にはっと我に返ると、声の主は不安そうに凛月の顔を覗き込んでいた。
「さっきから独りで笑って、どうしたの」
ふう、とAは呆れたように笑った。ブルーベルみたいな淡い紫色のドレス。華奢な肩周りをくるりと回るフリルが花を添えている。
「ふふふ、昔のことを思い出してね」
「思い出し笑いは『へんたい』のはじまりだそうね」
凛月はぎょっとした。誰だこの純粋なお嬢さんに変態なんて汚い言葉を教えたのは！？
……俺だ。
子供が覚えたての言葉を使いたがるそれと同じで、Aにはなんの悪気もない。
「……それ、いい言葉じゃないからあんまり使わないでよ」
「はーい」
凛月が苦い顔で注意すると、Aは知っていたかのようにふふんと笑った。たまに言動が読めない。不思議な生き物だ。
「でも不思議だわ。王都のそばの村と全然違うんだもの」
そう言ってAは本当に不思議そうに考え込んだ。
あんた賢いのか馬鹿なのかどっちかにしなよ。と凛月は心の中でツッコミを入れた。
ただ、ショックを受けて塞ぎ込む可能性があると踏んでいた凛月は少し安心した。
今回ばかりは若さゆえの好奇心に助けられた。
「馬鹿だねえ、王都から見えるあのあたりの集落は、言い方が悪いけど『王さま』のために用意された『動物園』だよ。毎朝うちの『王さま』は宮殿からあの街を眺めて、今日もこの国は平和だーとか思ってんだろうねぇ」
「……って、あんたもそうだったね」
「そうね」
凛月が目を開けると、天使のような微笑みがあった。
「とにかく、これがこの国の現状。どこに行ったってそんなに変わらないね。Aの家の領だってそうだろうね。平和なのは、平和に見えるのはあの『動物園』だけだよ。これでわかった？」
「ええ……それでお父様やお兄様は私をずっと王都に置いていたのね」
Aはうんうん、と頷いて見せた。
「まあ、あんたは『修道院』生活が長かったみたいだし。知らなくて当然かもね」
先ほどあの子供たちを『修道院』に入れると言ったが、地位と財産のある家の娘も生活のスキルを学ぶためとか色々な理由で『修道院』に入れることが多い。
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さなえ(プロフ) - フラッペさん» コメントありがとうございます。お褒めに預かり光栄です。細かいところにこだわって書いてみました。 (2018年8月18日 16時) (
レス) id: b33fb32224 (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - お話の内容が濃くて私的には面白い物語でした。こういう細かな文章が好きで、なんか一つ一つに感情がこもっているというか……まぁ、とにかく良い話でした。 (2018年8月16日 1時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さなえ@Ｌｏｖｅ伊織 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sanaeHome/
作成日時：2017年7月29日 16時
