冴えない女は蜜の味 4《JM》

161　伝え合う口づけ ページ11

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しゃがみこんだお互いが、甘く溶け合う。


静かに長く、口づける時間がこのままずっと止まればいいのに、ずっとこうして居たいのに。


止まる事の無い時間が、すぐに訪れる現実が
この時間を大切にしたいと強く思わせる。




誰にも秘密の、この時間が終わればAはジョングクの元に帰る。呼び止めたって、すり抜けて。




離したくない唇は、今だけは、僕のもの。





指を絡めて左の薬指から指輪を抜き取る。

今だけは、Aを離して、僕達から、離れてよ。



唇を重ねながら、カーディガンのポケットに指輪を入れる。



僕との時間が終わればまたつける指輪を、
僕は決して見ない様に、明日からも背中を向けるから。






唇は、お互いの気持ちを伝え合う様に

交互に重なる。





求めては返して、返せばまた、返事するかの様に、気持ちを確かめ合う。



ありふれた愛の言葉をかわすより、心で、伝え合った。





唇を離す僕をAは追いかけてまた重ねる、
僕のそばに居たいと、言われた気がした。

Aが離そうとすると、僕は頭を押さえて逃がさない。
僕だってそばに居たいと、言えた気がした。






なのに、言葉にしないのは

自分の気持ちを握り潰して、お互い目も合わせないで、他人より遠い二人に、戻るとわかっているから。







A、愛しくて仕方ないよ。






どんなに、言葉で約束を交わした恋人達より
確かなものを感じてる。

僕達は心で、心だけで、繋がってるよね？

僕からの気持ちを受け入れなくてもいいから、
伝えさせてよ。

誰にも聴こえないくらい小さな声で。




JM「僕はAが…」
















遠くから、コツ、コツ、コツ、と革靴の音が響く。

その音はだんだんと大きくなって、僕達のいる書類棚に向かってくる。



……ヒョンが、向かって来る。


Aが顔を離して、音の方を見た。
僕も音の方を向く。



静かにAの頭を撫でて、そのまま頭から頬に手をあて、愛しい瞳が、僕を見つめる。



この時間を消し去る時間。
ヒョンの元に行かないと…






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