ハンカチ ページ16
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何度も何度もわたしにまた会えるって言うのに、おくらはその言葉を口にするたびにどんどんどんどん悲しい顔になっていった。
私のあげたピアスを見ながら、また会えるってもう一度呟く。
わたしは、ずっと付けていた透明ピアスを外すとおくらに貰ったピアスを付ける。
「似合う?」
「めっちゃ似合う。俺が選んだから当たり前やろ?」
「うん。絶対また会えるから。」
その一言に、おくらはまた安心したように笑顔になった。
ああ、私が同意しなかったからしょんぼりしてたのかって気づく。
気づけば日が沈みかけていて、お昼ご飯も食べてないことに気づいたけど、最後まで離れられなかった。
「じゃあもう行くから」
「うん。元気でね」
「Aも。」
「林檎の樹、植えてな」
「森できるくらい植えるわ笑」
「時間かかるけど実は絶対なるから」
「うん。頑張る。」
じゃあね、頑張ってねって思いを込めておくらとさよならの握手をする。
何かを感じ取ったのか、とうふがにゃあと鳴きながら、大好きなおくらの手に擦り寄った。
おくらは初めてあった時より何倍も大きくなった手でとうふを撫で回す。
一通り終わると、私は手を振りながらおくらの元を後にした。
次の日、おくらの家の前まで行ってみたけどもぬけの殻だった。
ただ、寂しさだけが確かだった。
Aが見えなくなるまでずっと家の外にいた。
柔らかくて暖かかった手のひらは、俺と初めてあった時、突き飛ばされた俺を引き起こしてくれた時の感触とさほど変わらなかった。
どんどん小さくなっていったAの背中に少し泣きそうになったけど、どんどん不安になる俺に最後にまた会えると言ってくれたことが、ジャニーズに絶対なれるって後押ししてくれたことが俺の確かな自身の根源だった。
少し冷たくて無機質な新しい俺の部屋に入る。
トラックから下ろした荷物を、三人のいない寂しさを紛らわすように整理した。
考えないようにしようとすればするほど、ダンボールの中から出てくるのは思い出ばかりで苦笑する。
「あ、」
最後のダンボールから出てきたのは、ファイルに入った俺の似顔絵と、アルバムと、ピンクの柔らかいハンカチ。
初めてあった時に渡されてずっと返しそびれていた九年越しのハンカチは、ファイルとアルバムの間に挟まれてタイムカプセルのように忘れた頃に出てきた。
このハンカチを返すために、こらからの長い人生を生きようと思った。
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じょび(プロフ) - tadamomopiさん» ももくらさんありがと!!!!!!! (2019年3月30日 13時) (レス) id: 7786978901 (このIDを非表示/違反報告)
tadamomopi(プロフ) - やっぱりやっぱり大好き( ; ; )( ; ; ) (2019年3月28日 23時) (レス) id: fd599d71d8 (このIDを非表示/違反報告)
じょび(プロフ) - オクラさん» オクラさん!コメントありがとうございます!(○´ー`○)頑張ります! (2018年8月19日 11時) (レス) id: cab6392b32 (このIDを非表示/違反報告)
オクラ - とても面白いです(><)更新頑張ってください!!! (2018年8月19日 11時) (レス) id: 7ba911c0c9 (このIDを非表示/違反報告)
じょび(プロフ) - ∞くらら∞さん» ∞くらら∞さん!コメントありがとうございます!頑張ります!!! (2018年8月2日 1時) (レス) id: cab6392b32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:じょび | 作成日時:2018年7月9日 15時