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2つの嘘 ページ23









「嘘ついた。」

「なんの?」

「ほんまは俺サラリーマンなんかなりたないねん。」

「え?」

「ほんまは俺、ジャニーズになりたいねん」



Aは俺の顔を覗き込んだ。


とうふはこの微妙な空気感を知るはずもなくて、もっと撫でてくれと強請るように俺の手の甲に頬をすり寄せる。





「ごめん。私も嘘ついた。」

「え?」

「おくらにサラリーマンなんて絶対向いてないと思った。ジャニーズ、めっちゃええやん」




嘲笑するでもなく、嘘をついた俺に怒るでもなく、Aから知らされたのはお互い嘘をついていた事実。

でもその口から出たのは悲しいものじゃなくて、俺にとって最強に嬉しい背中を押す言葉だった。


「ほんまに?ほんまにそう思ってくれるん?」

「うん。めっちゃいいと思う。歌うまいし、話も面白いし、なんか、他の人とは違うものがある気がする。」

「サラリーマンって最初に聞いた時全然納得いかんかったけど、ジャニーズって言われたらめっちゃ応援できる。」



その言葉が嬉しくて、俯いていた顔を上へあげた。

Aの瞳に嘘はなくて、嬉しくて、顔がにやけてしまう。


「俺、絶対頑張るから、」

「うん」

「応援してな」

「うん」

「約束やで」

「わかった。約束。」



2人で乾杯して飲み干したカルピスは、子供の俺たちにとっては誓の盃だった。



「おくらのお母さんとお父さんは知ってんの?」

「言うたことないねん、」

「もう半分大人やから、話してみたら?」

「うん、俺、明日話してみる。」


いつだって俺の背中を押してくれるのはAだ。

あんなに打ち明けることに悩んでいたのに、話してみたらと言う一言をAから聞けただけで、俺はこんなにも自信満々になってしまう。


明日は勝負の日。


Aの家を後にして、家に帰った俺はさっさとベッドに入った。

勝負するためにはたっぷりの睡眠が必要だ。








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じょび(プロフ) - tadamomopiさん» ももくらさんやろ!!!IDでわかるんやからね!私も好き!!! (2018年12月17日 8時) (レス) id: cab6392b32 (このIDを非表示/違反報告)
tadamomopi(プロフ) - すき!! (2018年12月8日 20時) (レス) id: dd33592cf0 (このIDを非表示/違反報告)
じょび(プロフ) - ゆうさん» 住野よるさんの作品素敵ですよね!嬉しいお言葉ありがとうございます!頑張ります!! (2018年8月29日 16時) (レス) id: cab6392b32 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - そうです!!!住野よるさん私も大好きです!!!これからもじょび様の作品楽しみにしております(^^) (2018年8月28日 22時) (レス) id: d221d00b99 (このIDを非表示/違反報告)
じょび(プロフ) - ゆうさん» ゆうさん!コメントありがとうございます!住野よるさんの文学作品のことでしょうか、、、それならとっても嬉しいです!あの作品、とっても大好きで何回も読み返したのを思い出します(> <)意識はしてなかったのですがとっても嬉しいです! (2018年8月28日 22時) (レス) id: cab6392b32 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:じょび | 作成日時:2018年4月8日 1時

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