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−Eichi Side−
「……凛月先輩、引きずられて行っちゃいましたね?」
「ふふ、そうだねぇ……」
淹れたばかりの紅茶を、ひとくち。
フルーティーな香りが、味わいが、口いっぱいに広がる。
本当に、凛月くんは単に寝に来ただけのようだった。
元々活動内容なんて明快なものは、この部活には存在しないけれど……。
故に、先程のような凛月くんの様子も“いつも通り”だ。
それはそうと。
もし僕がレッスンに来ないようであれば、今みたいにAちゃんが迎えに来てくれたりするのかなぁ……?
あんまり信頼度に欠けるようなことはしたくないけれど、今度実践してみたい。
仮にもお試しの気持ちで……1回だけなら、そう簡単に落ちたりはしないだろう。
そんなことを企んでいたら、目の前の創くんが僕を呼んでいたことにやっと気付く。
……あぁ、ぼんやりしてはいけないね。いつでも堂々としていなければ。
気を引き締めたとき、同時に創くんが冗談混じりにこんなことを言ってきた。
「会長さんが上の空なの、ちょっと珍しいですね?
そんな様子だと、副会長さんがきたりして……」
「えぇ? そんな、今にでも実現しそうなことを言わないでおくれよ」
分からないですよ? と悪戯に笑う彼を見て、こちらもつられて笑みを零す。
創くんも、言うようになったねぇ。
__そんな風に、呑気に笑いあっていたら。
「英智」
突如聞き慣れた声に、小さな悲鳴が漏れる。流石の僕も驚いて、丁度手にしていたカップを落としてしまいそうになった。
おそるおそる顔を上げれば、案の定そこには腕を組み、仁王立ちで怒気のオーラを纏う、僕の幼馴染み……敬人がいた。
「敬人ってば、心臓止まるかと思ったよ……」
やはり創くんも予想外だったらしく、顔を真っ青にさせていた。
もちろん僕も、本当に敬人が来るとは思ってもいなくて、自然に自身の声が震える。
「……それで、何かあったのかい?」
コホンと咳払いをして、気持ちを切り替える。
今回は、敬人に呼び出されたりはしていないし……それに、敬人なりに僕の体調を気遣ってくれているのか、仕事もさせてくれない。
だから、実際怒られるような要素はない気がする。
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綺月(プロフ) - やっばいですキュンキュンしすぎて死にそうです (2021年10月24日 22時) (レス) @page44 id: 4b09ec865e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫水 | 作成日時:2020年7月26日 15時