貴様らとっくに両想いだからな！？[２]【天祥院英智】 (ページ32)

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－You Side－

『……わたし、』

『っわ』

突然、全身が前に引っ張られるような感覚に陥る。

気付いた時にはあたたかいものに包まれていて、英智くんにハグをされていた。

せっかく、意を決したというのに。

彼の予想外な行動で、一気に予定が崩されてしまった。
これじゃあ、体が熱くなるのも心拍数が上昇するのも致し方ない。

何とか自身の手だけを脱出させて、そろそろと背中に回す。

「離し難い、なぁ」

「公衆の面前で悪いけど、今だけだから……」

抱き締める力がちょっぴり強くなって、更にどきどき。

けれど、ぽつりと呟かれたそれに、ひとつの疑問が残った。

『今だけって、なんで？』

こんな甘い雰囲気とはかけ離れた声色で問うてしまったのは、失敗だったかもしれない。

英智くんの、え？という声と共に、軽く押された肩から少しの距離が生まれる。

『……好き合ってるんだし、今だけも何も、いつでも良いんじゃないの？』

「好き合ってる、」

『私は英智くんが好きで、英智くんも私が好きって言ってくれた。……違う？』

何か変なことを言っただろうか。面白いくらいに、英智くんは開いた口が塞がらない。

「……違わないけど。Aちゃんは、僕のことが好きなの？」

『さっきからそう言ってるよ』

確かに、直接的ではなく間接的に、だけど。

察しの良い英智くんなら簡単に分かってくれると思ってたけど、ちょっと回りくどすぎた、かな。

『えっ、どーしたの英智くん？具合でも……』

途端、はー……と溜息を吐きながら、しゃがみ込んだ英智くん。
突然立っているのが辛くなったのかと不安がよぎったけれど。

『……耳真っ赤、英智くん』

自分も制服のスカートを押さえながらしゃがんで、同じ高さにする。

すると、ほんのり赤く染まった、形の良い耳が目に映った。
両手で顔全体が覆われているせいで、表情が見えないのが少し残念。

「……君が突然、変なこと言うから、」

『私が英智くんを好きなのは、決して変なことじゃないよ？』

「ふふ。そういうことじゃないんだけどね……」

断念したのか、諦めたように顔を覆う手はゆっくり離れていく。

案の定、ほんのりピンク色で、不思議とこっちにもうつってくるような感じがした。

『好きです、英智くん』

「僕も。……好きだよ、Aちゃん」

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