第21話 ページ21
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夏休が終わりを迎える少し前にAは友人とファミレスで課題に取り組んでいた。1つ訂正するところがあるとするならば、主に友人が課題に取り組んでいた、ではあるが。
夏休み前よりも細くなった腕にシャーペンを持ち、必死に原稿用紙に向き合う彼女を見てAは目を細めた。
彼女の話だとその日は大会の翌日だったそうだ。
これは人伝に聞いた話だが、彼女の最後の夏は惜しくもトロフィーには届かなかったらしい。
そんな素振りを見せずに気丈に振る舞う彼女にAの涙腺が揺さぶられた気がした。時折文句を零しながら必死に志望理由を考える彼女の目元には薄ら隈が残っていた。
夜も深まった頃、2人は会計を済ませ蒸し暑さの残る夜道を歩き出した。
「そういえば」と切り出した友人の横顔が今も忘れられなかった。
「負けちゃったんだ、私たち」
向日葵のような彼女の笑顔がこんなにも痛々しく見えたのは初めてだった。その声は少し震えていた気がした。彼女の瞳には今にも零れてしまいそうな膜が張ってあった。
Aはうん、と短く返事をした。
「負けちゃったの、私たち」
負けた？違う、彼女は3年間培った全てをその試合にぶつけてきたはずだ。決勝に勝ち上がるまで彼女が何を得て何を失ったか、Aには想像できなくとも理解することはできた。
彼女の言葉が反芻した。
「負けたのかぁ、私たち」
弱々しく零した言葉は彼女の胸を締め付けていた。
昨日の今日だ、きっと彼女が自分自身と向き合うのは時期尚早だったのだ。遠くを見つめて、まるで夢を見ているかのような彼女の横顔がAには酷く美しく見えた。
彼女は充分頑張った。
今まで楽しかったことも苦しかったことも、沢山あったはずだ。そんな彼女の姿をAは3年間ずっと見てきた。
今はまだ思い出にするには早すぎて、それは彼女を苦しめる材料になってしまうかもしれない。タラレバだけが浮かんで、後悔する夏になってしまうかもしれない。
それでも、彼女の3年間は美しかった。
美しくて、眩しくて、Aが目を逸らしたくなるくらいに。
「お疲れ様」
よく頑張ったね、そう言ってAは彼女に腕を伸ばした。
Aを見つめた彼女は素直にAの腕に収まった。
貪欲に金色を求めていた彼女は誰よりも輝いていた。
Aは彼女の背中を優しく撫でた。
いつか彼女が銀色を、この夏を愛せますように、Aはそう願っていた。
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福原(プロフ) - ぱーぷる姫さん» ありがとうございます❤︎ぱーぷる姫さんにそう言っていただけて光栄です( X_X ) (2月24日 1時) (
レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぱーぷる姫(プロフ) - 涙が溢れ出ました！あまりに綺麗で切ない表現に何度も読み返しました。ありがとうございました！ (2月18日 15時) (レス) id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
福原(プロフ) - 幸絵さん» ご感想ありがとうございます(;_;)またどこかで2人が会える日がくることを願っています、、リョーマ！失恋組！初遭遇です！やはり初恋は実らないものですね、、 (2021年11月10日 9時) (レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
幸絵(プロフ) - 完結おめでとうございます！ついついヒロインの先輩と結ばれて欲しい〜って思ってしまいました。話は変わりますが、『劇場版リョーマ！』私も失恋した気分になりました！ (2021年11月10日 6時) (レス) id: 4696a5fece (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：福原 | 作成日時：2021年9月17日 0時
