*17* tatsuya.side ページ17
「…別れよっか」
小さな声だけどはっきり聞こえたこの言葉は
全く予想もしていない一言だった
頭の中が真っ白になって
心臓がバカみたいに早くなる
握っていた手のひらに汗が滲むのが
嫌でも分かった
だけれど
その焦りがバレたくなくて
平気なフリをした俺は
「ん、そうだね」
なんて
目も合わせず
あまりにも冷たい返事をした
本当は別れるつもりなどない
別れたくない
どうして?
他に好きなやつができた?
それとも
俺のことなんかもう好きじゃなくなった?
聞きたいことは次々と浮かんだけれど
その答えをAの口から聞きたくはない
それ以上何も言えなくなった俺は
俯いて意味もなく空っぽのラーメンを見つめる
家電の動く音だけが響く重たい空気を破ったのは
Aの方で
先ほどの俺の呑気な問いかけの返事だった
「えっと…買い物、だよね?
午後は暇だし、行こうよ」
俺はわかりやすく戸惑った
別れを認めてしまった今
もう行ってもしょうがない
だって
ペアリングを一緒に
見に行こうと思っていたのだから
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作者名:Hoshi | 作成日時:2022年3月15日 17時