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＊12＊ tatsuya.side ページ12
ラーメンの匂いが部屋に広がり
さらに腹が減ってきた
そんな気持ちを読み取ったかのように
「辰哉〜もう少しでできるからね」
と声をかけられ
簡単にタオルドライしただけの
まだ濡れた髪のまま席に着く
コンロの熱が部屋にこもらないよう
つけた換気扇の音や
ぐつぐつ煮える鍋の音に混じって
鼻歌がかすかに聞こえた
よく聞けば
俺のお気に入りの曲で
この曲が好きだと教えたとき
Aは初めて聞いたと言っていたけれど
今ではしっかり
フルサイズで歌えるようになっている
鍋から上がる湯気に包まれながら
キッチンをちょこちょこ動くAを
ぼ〜っと眺めれば
派手柄のだぼだぼTシャツに
ひとつだけ開いたピアスホール
昔俺に合わせてハイカラーにしたおかげで
所々明るい茶色がちらつく髪
清楚なタイプだったAが
いつのまにか俺色に染まってる
始めの頃ほど
好きの気持ちは大きくないけれど
反対に
安心、ずっと一緒にいたい
と思う気持ちが大きくなっていて
ピアスをよく買いに行く店で
最近見かけたペアリングが
ふと思い浮かんだ
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作者名：Hoshi | 作成日時：2022年3月15日 17時
