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「それで、結局何着買ったん?」

宵の帳に包まれた街中を走る一台の馬車。
ガタゴトと揺れるその車内で、ゾムは呆れたように目の前の二人に問いかけた。

『…黙秘でお願いします』
「全部だ」
『総統、』
「“グルッペン”」

相変わらず呼び名判定に厳しいグルッペンをスルーし、Aは座ったままため息を吐く。
その様子にオスマンはクスクスと笑いながらもAの格好を褒めた。

「トントンが微妙な顔する訳やな。でも似合っとるよ、その黒のドレス。可愛いし、大人の女性って感じ」
『ありがとうございます。オスマンさんもお似合いですよ。ゾムさんも、いつもとは違う装いで素敵です』
「そうか?フード無いし落ち着かんけどなぁ」

護衛に連れ出されたゾムはいつものパーカーではなく正装をしており、少しだけ長めの茶髪は尻尾のように後ろで一つに縛っていた。
普段影になりがちな彼の顔が堂々と明るみに晒されていて、本人はそれが気になるらしい。

「ちなみにAちゃん、緑のドレスはあった?」
『はい。緑と言うか、濃いめのエメラルドグリーンですけど』
「えっ、見たいわ!今度着てくれ!」
「俺も見たーい。ふふ、これからは外交パーティーも楽しくなるなぁ」

身を乗り出したゾムと楽しそうなオスマンに疑問符を浮かべる。
ひとまず言えるのは今後着せ替え人形になりそうだということだけだった。






久々に訪れたグラシエルの城内は相変わらず華やかで美しかった。
案内された会場も絢爛豪華の一言で、我々の城ともアステールの軍部とも大きく異なる様相である。
キョロキョロするゾムをオスマンが引っ張り、グルッペンを先導するAに続いて上座の高台へと歩いていく。
そこに居た一層豪華な衣服を纏った中年の男女はすぐにAの存在に気がついて声を上げた。

「A外交官!久しいな!」
『ご無沙汰しております、陛下。何時ぞやは力強い励ましのお言葉、誠にありがとうございました』
「なに、構わんよ。無事に再び会えただけでも御の字だ」
「あなた、もうAさんは外交官ではなくなってしまったのでしょう?お身体は大丈夫?辛かったら私達も力になりますからね」
「おお、そうだったな」
『皇后様、お心遣い痛み入ります。この度はご挨拶と共に、私が新たに属することになった我々の総統と筆頭外交官を連れて参りました』

流れるようにグルッペン達の紹介を始めたA。
彼女のおかげか皇族の反応も悪くなく、オスマンは胸の内で一人感心していた。

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ミリオ - 小説読ませていただいてます!いやもう読む手が止まらないくらい、面白いです。グル氏の少し子供っぽいところがツボで、来るたんびに部屋で一人で「キャー!!」って言ってますw私は読むことしかできませんが、これからも頑張ってください! (2020年3月23日 2時) (レス) id: 5e8093b1cc (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 豆粒さん» コメントありがとうございます。わかりやすいですか…!?嬉しいです!更新遅くて申し訳ないですが、またいらしていただけると嬉しいです。 (2017年11月27日 8時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
豆粒 - はじめまして!内容が濃くて続きが気になってしまいます(*´∀`*)あと その場の状況がわかりやすい詳しい文にとても惹き付けられちゃいます、更新お疲れさまですっ (2017年11月26日 20時) (レス) id: 6ecce97bae (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - RIARUさん» コメントありがとうございます。面白いと思っていただけて嬉しいです!いえいえ、私の話は参考にできるほどではないので…。ゼロからオリジナルで書かれた方がもっと面白いお話ができるかと思います。 (2017年11月21日 12時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
RIARU(プロフ) - 作品読ませていただいてます!とても面白いです。私も小説を書いてるんですが参考にしてもよろしいでしょうか?失礼だったらすみません。 (2017年11月19日 21時) (レス) id: 88c227d681 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:璃亜 | 作成日時:2017年7月7日 23時

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