57 ページ7
本日はいつも通り起きれた。
さすがに何日も寝坊はまずいので本当に良かったと思う。
朝食の席にゾムは居なかった。
朝早くから偵察に向かったのだろう。
ついでに自国の様子も探ってきてくれないだろうかと人任せなことを考えたが、彼にその義務も理由もないので期待するだけ無駄だ。
すぐにその考えを打ち消してAは今日もオスマンの報告を聞く。
やはり膠着しているようで、両国ともあと一歩力が足りない。
もう巻き込まれる未来が見えてしまいひとまず今後の対策を練っていたのだが、先に向こうから客がやって来た。
「失礼します！門の前にシャスティアの作戦参謀と外交官を名乗る者が来ておりまして、取り急ぎ会談を希望されているのですが…」
昼食を終えて食後のお茶をいただいていると、ノックと共に入室してきた兵は突然そう告げた。
は？と機嫌の悪そうに聞き返すオスマンに彼は一瞬肩をびくつかせるが、それでも何とか耐えてその場で指示を待っている。
グルッペンがカップを置いた音が妙に静かに響いた。
「…オスマン、一応聞くが会談の予定はあったのか？」
「ある訳ないやろ。アポくらい取ってから来いや」
「どうせ参戦要求やろ。さっさと断って来てどうぞ」
「はあ…めんどい…」
気だるそうに立ち上がるオスマン。
トントンがAの方へ申し訳なさそうな顔を向ける。
「Aさん、急で悪いんですが、会談が終わるまで部屋に居てもらってもええですか？」
『そのつもりでした。部下と一緒に居ますので何かあればお呼び下さい』
こちらとしてもシャスティアの外交官と顔を合わせるのは面倒だ、部屋にこもっていた方がトラブルは避けられるだろう。
会話を聞いていたオスマンがAの部下への伝言を指示する。
バタバタと走り出した兵を横目に彼女も立ち上がった。
「…ほんますんません、不自由な思いさして」
相変わらず申し訳なさそうなトントン。
そちらへ顔を向けて安心させるように笑いかける。
『構いませんよ。保護していただいているのはこちらなので』
気にしないようにと意味を込めたが彼の表情は晴れない。
そこでAはもう一言付け足す。
『シャスティアの参戦要求には応じないのですよね？』
「はい」
「前に言った通りだ。我々は奴らと組む気はない」
『なら結構です。確約されたお約束を信じて待つだけで良いのなら何も苦ではありません』
そう微笑むとトントンは目を丸くする。
しかしすぐにその顔に笑みを浮かべて頭を下げた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1429人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はろ - 初コメ失礼します。今日初めてこの小説を見つけ一気に読んでしまいました。素敵な作品をありがとうございます！ (2019年5月10日 23時) (
レス) id: 04eaede967 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あ、あの、エーデルが死ぬと思ってなくて思わず涙が……(T ^ T)作品好きです！ま、まさかのおおおおってなっておりますっっ！ (2019年4月26日 17時) (レス) id: 0dc2b364d7 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - フーさんさん» コメントありがとうございます。ボキャブラリー広いですか…！？まだまだ勉強不足な面もありますが、そう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございます。続編もあるのでよかったらご覧になってみてください。 (2018年3月14日 21時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
フーさん - 主様のボキャブラリー広すぎるぅううう… (2018年3月14日 13時) (レス) id: c25a3a0724 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 遊馬さん» コメントありがとうございます。まだまだ拙いですが、お褒めのお言葉とても嬉しいです…！お気遣いありがとうございます。次作もどうぞよろしくお願いします。 (2017年7月7日 14時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：璃亜
| 作成日時：2017年5月24日 22時
