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風が緩く吹き抜ける。
相変わらず人気のない地で揺れる草花を眺めながら、持参した大きな花束を目の前に置いた。
少し沈黙した後、誰もいない空間で小さく口を開く。
『大佐、今日の花、綺麗でしょう？つい気合いが入ってしまってこれだけの量になってしまいました。…しばらくこちらに伺えなくなってしまうので』
そう言ったAの顔に僅かに影がかかる。
俯いて見つめるその石は今日も彼女に何も言ってくれない。
しかし変わらず吹く風は優しくAの心を包んでいく。
ここに来ると涙ばかりが溢れていたが、今日は何故か全く出てこなかった。
『私、今日から我々に行くんです。自分にやれることをやっていくつもりです。…大佐がいらっしゃらないのは些か不安ですが』
『…たまに、戻ってきてもいいですか。…いや、多分貴方は駄目とは言わないでしょうね』
ふと上を見上げる。
空が青い、雲もない。
太陽の眩しさに目を細めながら、彼女はその日一番の笑みを浮かべた。
『…行ってきます、大佐。お元気で』
一人馬車に乗り、荷物と共に揺られる。
始終無言で外を眺めていると窓の外の景色がゆっくり流れだした。
やがて減速しきった馬車は静かに停止する。
覚えのある景色に扉を開ければ、見知った人物の顔が見えた。
「Aさん、お待ちしてました」
笑顔で迎えてくれた彼にAも挨拶を返す。
『トントンさん、わざわざお出迎えありがとうございます。今日からお世話になります、よろしくお願いいたします』
「こちらこそよろしくお願いします。ああ、荷物は部屋に運んどきますんで、先にグルさん達のとこ行きましょうか」
そう言ってトントンは後ろにいた使用人達に荷物を任せると、ゆったりとした足取りで先導する。
後ろをついて歩きながら彼女は疑問を口にした。
『部屋は何人部屋になるのでしょう？』
「もちろん一人部屋です。幹部同様の待遇になるんで。後で案内しますね」
『…なんだか申し訳ないです』
「え、いや遠慮しなくていいですよ。ちゃんと決まったことなんで。それよりグルさんが迷惑かけませんでした？一人で行くって言って聞かんかったんで」
困ったように笑うトントンにAも苦笑する。
相変わらず苦労しているようだ。
『そうですね、できればトントンさんにも来ていただきたかったです』
「ああやっぱり…ほんますみません。…無理矢理連れて来られたんちゃいますよね？」
『大丈夫ですよ』
そう言えば彼は安心したようにほっと息を吐いた。
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はろ - 初コメ失礼します。今日初めてこの小説を見つけ一気に読んでしまいました。素敵な作品をありがとうございます！ (2019年5月10日 23時) (
レス) id: 04eaede967 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あ、あの、エーデルが死ぬと思ってなくて思わず涙が……(T ^ T)作品好きです！ま、まさかのおおおおってなっておりますっっ！ (2019年4月26日 17時) (レス) id: 0dc2b364d7 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - フーさんさん» コメントありがとうございます。ボキャブラリー広いですか…！？まだまだ勉強不足な面もありますが、そう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございます。続編もあるのでよかったらご覧になってみてください。 (2018年3月14日 21時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
フーさん - 主様のボキャブラリー広すぎるぅううう… (2018年3月14日 13時) (レス) id: c25a3a0724 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 遊馬さん» コメントありがとうございます。まだまだ拙いですが、お褒めのお言葉とても嬉しいです…！お気遣いありがとうございます。次作もどうぞよろしくお願いします。 (2017年7月7日 14時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃亜
| 作成日時：2017年5月24日 22時
