【wrwrd!】とある社畜外交官の憂鬱２

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素朴な民家で権力者二人が紅茶を飲んでいる図はAからすれば違和感があるのだろう。
どことなく不思議そうな顔でこちらを見ている。
だが彼らはそんなことは全く気にせずに向かい側のAへ声をかけた。

「お前が辞めさせられたと聞いて心底驚いた。そちらの上層部の目は腐っているのか？」
『私のことを評価して下さるのは嬉しいですが、ここはアステール国内ですよ。過激な発言は慎んだ方が良いかと』
「ほんまにな、もっと言ってやって下さい。…でも自分も驚きました。今はどうされてるんですか？」
『仕事をしていた時には取れなかった睡眠を沢山取っています。あとは元部下が持ってきてくれる他国からの手紙を読んだり、彼らの相談に乗ったりしていますね』
「そうなんですか、ゆっくり休めてるようでよかったです。…今後の予定は決まってるんですか？」
『まだ未定です。…なんだか何もする気が起きなくて。…そうですね、ありがたいことにあちこちから落ち着いたら遊びに来るようお誘いいただいているので、貯金を使って顔見せついでに各地を旅行するのもいいかもしれません』

口元だけで微笑むA。
その目に一瞬儚く寂しげな色を見てしまったトントンは彼女の心境を察して口をつぐみ、次にかける言葉を慎重に選ぶ。
目の前で直属の上官が彼女を庇って亡くなったと聞いている。
きっと彼女の心はまだ癒えていないのだ、不用意に傷つけたくない。
だが隣の男は黙っていてはくれなかった。



「…A、行く場所がないなら我々の元へ来てくれないか。前も言ったが、俺はお前が欲しい」


静かに、しかし端的に爆弾発言をかましたグルッペンにトントンは目を大きく見開く。
反射的に叫ばなかった自分を褒めてほしい。
と言うかほんまに何してくれてんだこの人は！
大先生やないんやぞ！？
そもそも今日は様子見るだけって言ったのに！

『…そういう口説き文句は意中の女性にでもかけてあげて下さい』
「ちょっ、グルさん！！言葉足らなさすぎやろ！」

指摘されてからようやく気がついたグルッペンは、少し気まずそうに手袋のはめられた片手で自身の口元を覆い隠す。

「…あ、いや、すまん。だがお前のことを評価しているのは本当だ。それなりのポストも用意するし、要望も可能なだけ聞くつもりでいる。軍を辞めさせられた今なら悪い話ではないだろう？」
『そうですね。…ですがお断りします』

にっこりと、しかし再び断ったAに今度はグルッペンが目を見開く番だった。

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