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大佐の名前を必死に呼んで、そこからあまり記憶がない。
正確に言えば覚えているのは簡潔な事実のみで、自身の感情は抜け落ちてしまっている。
駆けつけた医者と共にエーデルは医務室へ運ばれた。
Aは付き添いを許されず上官から呼び出され、起こった出来事を話した。
監視カメラにも一部始終録画されており、当然Aの証言とも一致した。
男の凶器からは毒物が検出された。
どうやらシャスティアに雇われた者のようだった。
毒が回るのが早かったのか処置は間に合わず、エーデルは静かに息を引き取った。
数日後には軍を上げて葬儀が行われた。
棺に花を入れたが、ただ眠っているだけのように見えた。
人徳があり、実力も確かな人物が失われたことを多くの軍人が嘆き、悲しんだ。
それに混ざってヒソヒソと自分のことも囁かれていたが、Aの耳には何の音も入ってこなかった。
一人、また一人と城に戻っていく中、真新しい暮石の前に最後までAは立っていた。
未だ悲しみの色を浮かべた補佐官が意を決して声をかける。
「…A外交官」
『……ごめん、ちょっと一人にして。一時間で戻るから』
「…っ、……はい」
堪えるように唇を噛み締めると、補佐官は他の部下達を城へ促す。
彼らは重い足取りでその場を去り、誰もいなくなった静かな霊園でAは暮石に刻まれた名をただじっと見つめ続けた。
しばらく時間が経ち、緩く風が吹いた後ポツリと小さく何かを呟く。
『……大佐、貴方程の方が本当に亡くなってしまわれたなんて、私には信じられません。今からでも起き上がってくれていいんですよ』
返事は返ってこない。
しかし彼女は物言わぬ石に言葉をかけ続ける。
『…眠っているだけなのでしょう。すぐに目を開けて、いつものように笑って下さらないのですか』
『……もう、顔色が悪いって、言ってくれないんですか…？いつも通りですって、強がらせてくれないんですか…！』
『何で、私なんか庇ったんですか…！っ私が！大佐をお守りしなきゃいけなかったのに…！！』
言葉と共にボロボロと溢れてくる涙。
拭っても拭っても止まらなくて、ただただAの頬を濡らし続ける。
彼がいたからここまでこれた。
彼のおかげで自分は動けた。
感謝してもしきれないくらいの恩を貰ったのに、自分は何も返すことができなかった。
もう微笑んではくれない、あの頼もしい背中はどこにもない。
こんなにあっさり世界が終わるなんて、今だけはどうしても信じたくなかった。
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はろ - 初コメ失礼します。今日初めてこの小説を見つけ一気に読んでしまいました。素敵な作品をありがとうございます！ (2019年5月10日 23時) (
レス) id: 04eaede967 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あ、あの、エーデルが死ぬと思ってなくて思わず涙が……(T ^ T)作品好きです！ま、まさかのおおおおってなっておりますっっ！ (2019年4月26日 17時) (レス) id: 0dc2b364d7 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - フーさんさん» コメントありがとうございます。ボキャブラリー広いですか…！？まだまだ勉強不足な面もありますが、そう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございます。続編もあるのでよかったらご覧になってみてください。 (2018年3月14日 21時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
フーさん - 主様のボキャブラリー広すぎるぅううう… (2018年3月14日 13時) (レス) id: c25a3a0724 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 遊馬さん» コメントありがとうございます。まだまだ拙いですが、お褒めのお言葉とても嬉しいです…！お気遣いありがとうございます。次作もどうぞよろしくお願いします。 (2017年7月7日 14時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃亜
| 作成日時：2017年5月24日 22時
