70 ページ20
外交官執務室に戻ると部下達から次々に帰還を喜ぶ声が上がった。
ガタッと椅子を鳴らして立ち上がる第二外交官の顔は、もう完全に疲れ切っている。
悪いことをしたと思いつつ自身の机に向かえば、予想通りだが書類と手紙が積み上がっていた。
しかし期限順に並べてくれているあたりは優秀な部下に感謝したい。
「おかえりなさいませ、A外交官」
『ただいま。第二外交官、苦労かけたね。マレーネとの交渉もやってくれたんでしょう』
「いえ、大佐に送って下さった手紙のおかげで上手くいきました。ありがとうございます」
気休め程度に送ったあの手紙が役に立ったようだ。
しかし彼は顔を曇らせる。
「書類は期限が迫っていたものは片付けたのですが…その…」
『ああ、大丈夫。ありがとう』
「いらっしゃらない間に済ませた仕事の内容はこちらにまとめてあります」
差し出された用紙に軽く目を通す。
特に気になる点もない。
自分にはもったいないくらいの部下だ。
『…うん、大体わかった。やっぱり急ぎはマレーネだな』
「A外交官、指示を」
『マレーネに会談希望出す。向こうの意向を聞いてからになるけど、多分あっちは平和的に終わらせたいだろうからリズ国に連絡、調停してもらうよう持ち込む。リズならうちよりは中立寄りだし。我々が参戦しないことは確約取れてるからそこを材料にしよう。あと大佐もやってくれているけど我々不参戦の話を軍内に広めといて』
テキパキと指示を出したAにすぐに部下達が動き出す。
積まれた書類は一番期限の近いものだけチラッと見て、いつものように手紙の開封作業を始めながら再び第二外交官に声をかけた。
『マレーネとの会談はこのまま第二外交官がやろう。ただ我々に保護されていた私か補佐官が同席して信憑性は持たせた方がいい』
「ありがとうございます。…可能ならA外交官にお願いしたいです。先日お名前が上がりましたので」
『わかった。来週の外交相手には何か対応した？』
「はい、ご指名の国には一応延期を申し出て、A外交官が戻り次第連絡すると伝えました。…あまりお役に立てなくて申し訳ありません」
『いやすごい助かってるよ、ありがとう。…とりあえず二時間くらい寝てきたら？』
「いえ！大丈夫です。それよりも今はマレーネとの会談に備えます」
『…ごめんね。この件が片付いたら休み取らせるから』
疲れを隠して微笑む第二外交官に申し訳なく思いつつ、ようやくAは最後の手紙の封を開けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1429人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はろ - 初コメ失礼します。今日初めてこの小説を見つけ一気に読んでしまいました。素敵な作品をありがとうございます！ (2019年5月10日 23時) (
レス) id: 04eaede967 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あ、あの、エーデルが死ぬと思ってなくて思わず涙が……(T ^ T)作品好きです！ま、まさかのおおおおってなっておりますっっ！ (2019年4月26日 17時) (レス) id: 0dc2b364d7 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - フーさんさん» コメントありがとうございます。ボキャブラリー広いですか…！？まだまだ勉強不足な面もありますが、そう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございます。続編もあるのでよかったらご覧になってみてください。 (2018年3月14日 21時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
フーさん - 主様のボキャブラリー広すぎるぅううう… (2018年3月14日 13時) (レス) id: c25a3a0724 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 遊馬さん» コメントありがとうございます。まだまだ拙いですが、お褒めのお言葉とても嬉しいです…！お気遣いありがとうございます。次作もどうぞよろしくお願いします。 (2017年7月7日 14時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：璃亜
| 作成日時：2017年5月24日 22時
