【wrwrd!】とある社畜外交官の憂鬱

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カードによる圧力は書記長へ言いつけてやり返した。
昼食は外交としてはプラスだが仕事の溜まっているAの時間としてはマイナスだ。
勝率で言うなら五分五分、むしろ痛み分けと言った方がいい。
A自身は別に好きで駆け引きをしている訳ではないので、もうこのまま終わっても構わないのだが、なんとなく期待されている気がする。

『…そう言っていただき光栄です。ではお言葉に甘えてお伺いいたしますが、本日は何故ご招待していただけたのでしょう』
「君と話したかった、という理由では駄目か？」

完全に仕掛けてきている。
彼や幹部の期待に応えるなら乗るべきなんだろう。
しかし思い通りになるのもなんとなく癪である。
…よし、適当にはぐらかしてかわそう。


『フフ、総統閣下はご冗談がお好きでいらっしゃいますね。ありがたいですが気を遣っていただかなくて大丈夫ですよ』
「冗談ではないぞ。君とは今後友好的な関係を築きたいと思っている」
『ありがとうございます。今のは総統閣下、ひいては我々国のお言葉と捉えてよろしいので？』
「さて、どうだろうな。だが今の段階では貴国ではなく君個人に対してとだけ言っておこう」
『でしたら次回までに少しでも我が国に興味を持っていただけるよう何か策を講じなければなりませんね』

流れるような会話を打ち切りお茶を飲む。
さてどうしようかと考えていると、こちらを見ていた鬱がポツリと言葉を零した。


「え、グルちゃんフラれとるやん」


途端に静まり返る食堂内。
オスマンがさすが大先生や、と肩を震わせ始めた。
この人は笑い上戸なのだろうか。
残りのメンバーは訳がわからないようで鬱に詰め寄っている。

「何言ってんの大ちゃん」
「あれ、だって今の流れ口説き文句みたいなもんやろ」
「口説き文句…クッ、ハハッ、確かに…！」
「ゾム？え、マジで？」
「グルッペンをフるとかめっちゃ肝据わってるやん自分。あーなるほど、確かにシッマの言うてた通りおもろいわ」

ニヤニヤと笑みを浮かべるゾムは楽しそうにこちらを見ている。
ただからかわれているだけなのは一目瞭然だが、挨拶時よりも関心を持った様子なのはコネシマ達の話のせいか、今の鬱まで含めたやり取りのせいか。
下手に反論すると本気っぽく見えてしまいそうなので、曖昧に微笑んでとぼけておくことにしよう。

食事はまだ終わらなさそうである。

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