. ページ48
.
弾いている最中は、子供の頃にかえったような気持ちで、終わった後もずっと幼い心のまま、日和くんとずっと話をしていた。
ただただ楽しくて、この夢のような時間が、ずっと続けばいいと思っていた。
けれど、楽しい時間はあっという間で、すぐに終わりを迎えてしまう。
「……そろそろ帰らないと。流石に、母に怪しまれる」
名残惜しむように、椅子からゆっくりと立ち上がる。
そして、月光に照らされる美しい彼を見つめた。
「日和くん。本当に、今までありがとう。何があっても、日和くんがいたから乗り越えられた」
そう言えば、日和くんは泣きそうな顔で私の手を縋るように掴む。
その姿は、昔の泣き虫の彼を見ているようで、「こういうとこは変わらないんだ」と少しだけ笑ってしまいそうだった。
「一時期、日和くんが夢ノ咲にいたころは離れてしまっていたけど、またこうやって一緒にいられる事が出来て、本当に嬉しかったよ」
彼は私の手をじっと見つめたまま、私の目を見ようとしない。
それでも私は、彼に伝えたい事を全てぶつけた。
「日和くんは実力がある。だから大丈夫。日和くんなら、日和くんが大好きな”ほんもののアイドル”になれる」
その道に私はいないけれど、彼がこれから先、アイドルとしてキラキラと輝く姿を見られるなら本望だ。
「これが本当のお別れだね。沢山の思い出を、楽しい日々をありがとう」
「さようなら、日和くん」
彼の手から自分の手を離し、重い足取りでドアへ向かう。
すると、突然後ろから勢いよく抱き締められ、身動きが取れなくなった。
「行かないで……Aちゃん」
私の首元に顔を埋める日和くんの声は震えていて、心做しか埋めている部分が濡れていくように感じた。
彼の腕に触れれば、出会った時から今日というこの日までの、彼との思い出が脳内を駆け巡る。
楽しかった事、悲しかった事、辛かった事、楽しかった事、楽しかった事……
「嫌だ……日和くんっ。私っ……」
一度出た涙は、自分の本音のように次々に溢れ出る。
辞めたくない。もっともっと、皆と一緒にいたかった。
叶うならば、誰か私を連れ去ってほしい。
母から逃れられないという運命ごと、私を_______＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 706人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リア(プロフ) - 最高に面白いです！日和が可愛すぎる！！！更新楽しみに待っています(^^) (2020年1月24日 17時) (
レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 凄く私好きな話だと思います！滅茶苦茶好きになりました！！更新待ってます。頑張ってください！！ (2020年1月23日 6時) (レス) id: 1d868b34d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：水神友花 | 作成日時：2020年1月19日 12時
