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「…ごめん。少しだけ、このままで居させて」
耳元でそんな優しい声を出した黄瀬くんを突き飛ばすことなんて出来るはずもなくて。
というかきっと、私はそんなことはしない。
好きじゃない、なんて散々言い聞かせてたくせに。心臓は黄瀬くんに聞こえちゃうんじゃないかってくらいうるさく鳴り響いていて。
好きになったら嫌われる。
せっかく築きあげてきたこの関係だって、中学へと逆戻り。
それが分かってるはずなのに、私は黄瀬くんを抱き締め返してしまった。
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「…ごめん、ほんと」
しばらくの間抱きしめられていた。
もう少しこのままでいたい、という願望は叶わず黄瀬くんは私を手放した。
『…なんかあったの?』
「さっきの女の子、あれ俺の元カノなんスよ」
それを聞いて、心臓がちぎれるように痛くなって、身体に力が上手く入らなくて。
そもそも黄瀬くんのこと好きな女の子だってたくさんいるはずで、元カノもいておかしくない。
それに今更気づいて勝手に傷ついて。
「…俺と付き合ったことが原因で虐められて、転校して。まだ好きだって言ったら、好きな人がいるから気持ちには答えられないって」
急に入ってくる情報の多さに頭がパンクしそうになるが、なんとか整理して。
「罪悪感で私の事が好きだって勘違いしてるだけって言われちゃったんスよね、」
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作者名:愛璃珠 | 作成日時:2021年8月7日 20時