猫みたいな彼と彼女のお話

陽だまりの猫 ページ10

.

柔らかな陽が差し込む、麗らかな午後のこと。

寝心地の良いいつものソファの上で樹はふと目を覚ました。
そのまま物音のない部屋にぐるりと視線を巡らせてみたが、この部屋の住人である彼女の姿は見えない。


「…A…？」


名前を口にしながら体を起こせば、ソファの下にその姿を見つけた。
健やかな寝息が聞こえてきて、樹はひとつ笑みをこぼすと静かにソファを下りて彼女の横へと座り込む。

投げ出された手の傍に本が置いてあるところを見ると、読書中に眠たくなってしまったのだろう。
ちょっとだけ…と横になる彼女の姿が簡単に想像できて、落ちていた本を拾うと近くのテーブルに載せた。


「…間抜け面…」


ぽかんと開いた口に小さく呟いたその表情はとても優しく、慈愛に満ちていた。

そっと眠っている彼女の頬に手を添えると口元をきゅっと結び、その感触を欲しがっていたかのようにすり寄ってくる。


「猫かよ…」


可愛らしいその仕草に樹の胸には愛おしさが溢れて、手を添えている逆側の頬にそっと唇を寄せる。

ソファの上に手を伸ばして取ったブランケットを彼女に掛けて、樹も隣に体を横たえると彼女の首の下に腕を差し込み軽く抱き寄せた。



麗らかな午後。

暖かな陽だまりの中で二匹の猫が仲良く寄り添ってお昼寝をしていました。


…というお話。



end

お泊り会→←知らなかったこと

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す