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◇◇◇
「Aさぁ、…」
「んー?」
「俺のさ…なんていうかな…、ちゃんとした彼女になりたい?」
ベッドの上、裸の上半身だけ起こした慎が言い出した言葉に、
端に座り下着を身に着けていた手を止め振り返った。
「…どうしたの急に」
「いや、なんとなく」
なんとなくでそんなこと言わないでほしい。
まだほんの少し、そんなことで揺れちゃう自分がいるから。
慎から目を逸らして、床に落ちていたブラウスを拾った。
「俺たちって結構長くこんなことしてきてるじゃん」
「まあね」
「世界で一番Aの身体知ってんの俺だと思うもん」
「…バカじゃないの」
「だって絶対そうだし」
「そうかもね」
たしかに単純に相性がいい。肌が合うっていうのかな。
もちろんそれだけが目的で会うこともあるけど、会えば必ず身体を重ねるというわけでもない。
普通に食事をしたり、飲みに行ったり…気が向けばまるでデートみたいに出掛けたりもする。
傍から見れば、恋人同士に見えるのかもしれない。
でも……。
「…無理、でしょ」
「……んー」
実際今まで付き合って別れてを何度か繰り返して、今の状態に落ち着いてる。
どうしてなのかな…いざ恋人という形になるとどうしても上手くいかなかった。
気持ちが大きすぎるのかもしれない。
ちょっとしたことで責めたりしてお互いを傷つけ合って…結局それに疲れ果ててしまって。
だから今、こんな風に会うのが私にはちょうどいい。
慎が誰と何をしても、付き合っているわけじゃないんだから関係ない。
何も期待しない代わりに、傷つくこともない。
慎がどうかは知らない。
私は他の人と付き合うたびに、もう会わないようにしようって一応は考える。
…それが上手くいったためしはないけれど。
「このままでいいよ」
「…だね」
「じゃあ帰るから…お腹冷やさないでね」
なんだか胸が苦しくなってきた気がして、足早に部屋を出た。
気持ちのコントロールをする頭のどこかが、慎に対してだけは上手に作動しない。
関係を断ってしまうのが一番いいのは分かってる。
だけどごめんね…もう少しだけ。
自分からさよならを言うのは無理そうだから。
いつか慎に大切な人が出来たら…その時は簡単に捨ててね。
本当にワガママなのは、私。
end
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ちょる(プロフ) - も。さん» はじめまして。たくさん褒めていただきこちらが嬉しくて叫び出しそうです…!ひとまずはもうひとつの作品の方を頑張りますね。感想頂きどうもありがとうございました! (2020年6月7日 21時) (レス) id: 7af395255e (このIDを非表示/違反報告)
も。(プロフ) - こんにちは!お話全て読ませて頂きました、どれも素敵なお話で胸がキュンキュンして叫び出しそうになりながら読みました……これからも更新頑張ってください!猫みたいな〜の作品の方も読ませて頂きます! (2020年6月7日 17時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょる | 作成日時:2020年3月1日 21時