あいつはあの子のもの－風磨－ (ページ50)

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『考えるな…考えるな…』

あれは夢だ、きっとそうだ。

そう呪文のように唱えていた時、

『…？』

LINEの通知音が鳴った。

見てみると、

『ぬおっ!!』

風磨からだった。

今、ちょうどあなたのこと考えてました

なんてドラマとかでロマンチックな展開を

よく目にするけど、実際、

そんな余裕こいてる暇はない。

ってか、変な声出て

ロマンチックのロの字も

かすってないし。

－今どこ？

『ド直球だな、おい』

思わず顔がにやける。

そんな自分を誰かに

見られているんじゃないかと、

はっと我に返る。

警戒心丸出しで

辺りをキョロキョロ見てみるが、

当然誰かが自分を見ているわけがない。

『…あー、もうっ！』

彼に返事をしないまま携帯を閉じ、

早歩きで家へと向かった。

悪いことした気もするが、

そんなこと気にしてる場合じゃない。

これ以上あいつのこと考えてると

頭がおかしくなりそうだ。

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(人1)side

あれから寝れなくて、

気がつけばもうすぐ昼になってた。

暇つぶしに携帯を開くと、

見たくない名前が視界に写った。

恐る恐るLINEを開いてみると、

－あれからどうなった？？

－もしかして別れちゃった？笑

(人1)｢…最低……｣

なんてイラついてるくせに、

－寂しくなったら、俺のこと呼んで？

－いつでも駆けつけるから

最後の二行で

さっきまでの怒りが嘘のように消えていく。

…やっぱり、私バカなのかな。

(人1)｢……嫌いになんてなれないよ…｣

私の中で、健人との思い出は

まだ色褪せてはいないんだと

改めて気づかされた。

それと同時に込み上げた黒い感情が

誰かを傷つけることになるだなんて、

この時の私はまだ知らない。