あいつはあの子のもの－風磨－ (ページ31)

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『うわー…すごい人だね』

そう言うと、ふいに

左手に感じる温もり。

『……中島…？』

そう言うと、すぐさま指を絡めてきた。

なにこれ。

まるで本当の恋人同士みたいじゃん。

そう思っていると、

健人｢…いやだったら、離していいよ｣

どこか悲しそうな顔をしながら

私から目線をそらした。

『別に、嫌じゃないよ？』

そう言うと、"そっか"なんて言いながら

笑顔のくせに

どこか悲しそうな顔をする中島。

今日に限って、何でこんなに優しいの…？

昨日はあんなに意地悪してきたくせに…。

すると、

『あっ……』

見慣れた後ろ姿が視界に入った。

男友達と楽しそうに話しているあの横顔。

間違いない。

菊池だ…。

でも、(人1)の姿が見当たらない。

どうして？

いつもなら、喧嘩しても

まるで何事もなかったかのように

どんな時でも一緒にいるのに。

健人｢どうかした？｣

そう言って、私の目線の先を見た中島が

私を見ているのが見なくてもわかる。

横から感じる視線に気づかないフリを

している私を、きっと中島は気づいてるはず。

中島より、今は菊池を見ていたい

と思う気持ちが中島に伝わってしまったのか、

握られた手がさらにぎゅっと強く握られる。

それでも、私は中島の方を向きたくなかった。

だって、中島が悲しそうな顔で

私を見つめているのがわかるから。

そんな顔見たら、

自分の気持ちより、

中島への申し訳ない気持ちの方が

強くなってしまうから。

だから私は、一かバチかの賭けをした。

手を振りほどいた私を中島が

追いかけてくれるかどうかを。

もう、どうにでもなってしまえばいい。

そう思って、

深く深呼吸して中島の手を離した時、

『……っ!!』

菊池と目が合った。

離した中島の手が

案外するりと離れたことに動揺した瞬間に

体が動かなくなって、

私の視界に映っていた菊池が

中島の顔で見えなくなる。

そのすぐ後に感じる中島の唇の感触。

それが波乱幕開けだった。