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侑李の指が、私の涙を拭ってゆっくりと離れていった。
代わりに落ちてきたのは僅かな重み。
首筋には、ひんやりとした冷たさが纏わりついた。
A「――、え？侑李、これ……、」
侑李「昨日、行ったら閉店してたけど、どうにか頼み込んだ。」
A「……、馬鹿でしょ。」
侑李「誰のせいで馬鹿になってると思ってんのさ。」
耳元で聞こえる侑李の笑い声がくすぐったい。
少しでも俯こうなら、昨日私が欲しいと言ったネックレスが光って、見える。
簡単に買えないと言ったのは、侑李だったのに。
侑李「ねえ、A。前に言ったよね。お互いに好きじゃなくたって付き合い始めるカップルはいるって。」
A「……うん。」
侑李「でも、付き合っていくうちに本当にお互いを好きになるカップルもいると思うんだよね。」
顔を上げれば、侑李の優しい眼差しがあった。
どうして、気付かなかったんだろう。
恋は盲目という言葉はもしかしたら、相手の欠点が見えなくなるという意味以外もあるのかもしれない。
大貴の気持ちにも気付かなかった私はきっと、侑李の気持ちにも気付けなかった。
侑李「僕たちは、そこらへんの恋人たちと、何にも変わらないよ。」
もう一度頬に伸びた侑李の手の温かさに目を細める。
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作者名：環
| 作成日時：2019年2月23日 10時
