91 ページ41
.
侑李「なーに、大貴のことでも思い出したの？」
A「……違うよ。」
その目が、どんなに優しく細められたとしても。
私には、曖昧に微笑んで見せるしか出来ない。
A「侑李が、何考えてるのかなー、って思って。」
侑李の方は、一瞬呆気にとられたように眼を丸くしたけれど、すぐにまた口の端を持ち上げた。
眉尻を下げて、肩を竦めた侑李の手は、私の頭へと伸びた。
ぽん、と心地よい温もりが頭上に落ちてくる。
侑李「別に何も、考えてないよ。」
A「――そっか…、」
その温もりが、淡い痺れをもたらした。
ぎゅっと心臓を抓まれたような気持ちになる。
だって、気付いてしまったんだ。
侑李が私の頭を撫でるのはーーー
付き合い始めてから、これが初めて。
A「ねえ、侑李。」
侑李「何、」
A「店長のこと、まだ好き？」
侑李「……なにその質問。」
困ったように笑う侑李は、曖昧に首を傾げて見せた。
髪を梳く指先がくすぐったくて、愛しいだなんて。
彼が私の頭をよく撫でてくれたあの頃には、思いもしなかった。
侑李「Aは？」
A「え？」
侑李「Aは、大貴のこと、まだ好き？」
私たちの距離は、あの頃から近付いたのだろうか。
それとも、遠退いたのだろうか。
泣きたい気持ちになった。
A「……うん。」
そうして私は、
彼の隣にいる為に、
神の御前で嘘を吐いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 513人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：環
| 作成日時：2018年12月18日 15時
