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リビングで家の電話が鳴った。
素早く、受話器を手にしようとして見事に失敗した。
先に受話器をとった母からの転送で、ご丁寧に私の目の前の子機が鳴らされた。
「知念君からねー。」
A「……ありがと、」
まさかとは思ったけど、やっぱりそうだ。
午後8時。
お風呂上がりの濡れた髪にタオルを巻き直しながら、子機を手に取り、母にお礼を言う。
「あんた最近、家の電話使い過ぎ。自分の電話使いなさいよー。」
A「…………、」
ですよねー、と小声で相槌を打って、
子機を両手で包むようにして耳に当てた。
A「お電話代わりましたー。」
侑李「ねえ携帯。電源切らないでくれない？」
A「切ったんじゃないよ。充電が無くなってるだけ。」
自室へと戻って、暖房をつけながら電話口の向こうにいる侑李に文句を垂れた。
店長が婚約してから2ヶ月が過ぎて、私たちは以前よりも時間を共有することが増えていた。
逢わない日にも、特に用がなくても、
電話をかけてくるようになった。
ただ、私は大学3年生なわけで、曲がりなりにも就活準備中なものだから、四六時中スマホを触っていることはできない。
気付けば放置し切っていたスマホの充電がなくなって音信不通。
ここ最近、そんなことが続いている。
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作者名：環
| 作成日時：2018年12月18日 15時
