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なんであいつは、
ああも簡単に手を出してしまったんだろう。
機嫌が悪くなることや苛立つことなんて
普段からいくらでもあるのに、
でもこんな馬鹿なことは絶対にしなかったのに。
慧「………A、」
A「………。」
慧「A？」
A「…え、あ、なに…？」
慧「気にすんなって。
俺らが勝手にもめたんだからさ。」
A「うん………。」
目の前の私の表情があまりに沈んで見えたのか、
ハンカチを持つ手が
小刻みに震えてしまっているせいか、
伊野尾君は私を安心させようと笑って見せてくれるのに、私は上手く平静を装うことも出来ずに、震えた口でギリギリ笑って見せた。
自分でも可笑しいくらいに動揺している。
………何に？
慧「…みんな練習してっかなー。
俺ら来ねーから待ってっかな。
でもこんな顔で行く訳にもいかねーしなー。」
A「あ、私、行ってこようか。」
慧「いや、いーよ。んな青い顔でみんなのとこ行ったら余計に不思議がられんじゃん。」
A「………ごめん。」
だけど胸が苦しくて、
呼吸すら上手く喉を通らないくらいに、
上手く心臓も打てないくらいに、
私は居場所をなくした子供みたいに落ち着かなくなってしまった。
.
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作者名：環
| 作成日時：2018年7月16日 19時
