メルトサマー…Ryosuke.Y... (ページ45)

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私はもう何も気にしていない。

何も思っていない。

あいつにもそう思わせられるように。

でも一歩階段を踏み直したところで
また、足は止まった。

今度は足が止まったというより、
衝撃的に全身が硬直した。

あいつの目の前にいる相手を見て、
とても平静を装える気がしなかった。

私とあいつが、別れる原因になった人。

私はもうあいつが振り返れば十分に視界に入ってしまいそうな位置にいて、

そしてふとあいつが振り返りそうだったから、
私は急いで体を翻し階段を駆け下りた。

あまりに焦ってしまって途中教科書の上にあったペンケースを落としてしまったけど、

何よりあいつに気付かれる前にいなくなりたくて、そのまま走った。

走りながら、何処に向かっているのか。

始業のチャイムが鳴り誰も見えなくなって、
それでも何処かへ、あてもなく走った。

さっきクラスの男子たちが私に妙な視線を送っていた意味が、やっと分かった。

あの人と一緒だから、
私にあの目線を送ってきたんだ。

A「っ、ふ、…………。」

誰もいない廊下の先に行き着いて、
力が抜けて立ち止まった。

掌で押し込んでいた声と涙が
どうしても収まりきらずに漏れて、

頭と胸がガンガンと痛むのを
教科書と一緒に抱き込みながら、

冷たい床に座り込んで涙を落とした。

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