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あれは、去年の夏の終わり。
大して生きてきてもいないけど、
一生分の幸運を使ってしまったと思った。
いつもの2倍落ち込んでも
4倍笑って
8倍泣いても
100倍は幸せだった。
それから数ヶ月が経った桜の季節。
今、200倍の不幸が私を襲っている。
A「……これは…何の嫌がらせか…。」
どすの利いた低い声で呟いた台詞は、周りで飛び交う明るい声に掻き消されようとしていた。
ただ隣にいた大ちゃんには微かに聞こえたようで、あ？なに？と聞き返されたけれど、私はそれに返答する心の余裕はなかった。
大ちゃんは、私が見つめる掲示板を同じように見上げ、あー……と、全てを察したように呟いた。
大貴「おまえ運無さすぎ。」
A「……言わないで。」
不憫そうな笑顔で掲示板を見つめている大ちゃんの言葉がぐさりと胸に刺さり、私は直ぐに其れから目を離した。
見慣れた中等部から馴染みの子たちは「離れちゃったねー」とか「遊びに行くねー」とか明るい声で校舎へ入っていって、
外部から入ってきたであろう見慣れない子たちは既に友達グループが出来ている周囲からはぐれてしまった顔で黙って校舎に入っていく。
私はその何方にも属さず、世の不幸を一身に背負ったような暗い背中で校舎の中へ入っていった。
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作者名：環
| 作成日時：2018年7月8日 10時
