・ ページ46
＿＿
「がやー？」
「意外と早いね」
「何してんの」
ファサファサ、と柔らかそうな綺麗な羽根を動かして、俺のすぐ傍に降りてきた。
「ん、何か思い出に浸ってた」
「何の？」
「宮田とタマに初めて会った時のこと」
「懐かしいこと言うねえ」
用意していたティーセットに紅茶を注ぐと、タマは人間の姿になって俺の隣に座った。
「あの時住んでた屋敷、めっちゃ遠かったもんねー。ちょっと人里近くに来てくれて遊びに来るのすっごい楽になったわ」
「北山さんは最後まで渋ってたけどね」
あの森に住んでいた時。
世界には北山さんと俺しかいないような気がしていた。
近付く侵入者の気配も、強い結界に消されていく。
時折遊びに来てくれる渉と、渉の使い魔である母親も、顔を合わせても、異世界からの訪問者のような感覚だった。
タマと宮田と出会ってから、俺は少しずつ外の世界を知るようになった。
「いつだっけ。ミツが怒り狂って、村燃やしたの」
「その話すると北山さん機嫌悪くなるからなあ…」
＿＿
もう100年ほど前だろうか。
北山さんと俺が、ある魔法石を目指し、旅に出た時。
とある村で一晩明かそうと宿で体を休めていた時だった。
心優しそうに見えた村人たちは、全員仲間となって俺を捕えようとしていた罠だった。夜更けに寝込みを襲われ、俺はあっという間に捕縛された。
「っ…、はあ…っ」
俺と北山さんの契約を切ろうと、ありとあらゆる呪文を受け、俺の体はボロボロだった。
何度も何度も体に受ける呪文に、契約が薄れていく感覚がする。
意識も朦朧として来た時、遠くで赤く燃え上がる炎が見えた気がした。
そして次に俺が目を覚ました時、血だらけの北山さんの腕に、俺は抱き締められていた。
「き、たやま、さん…？」
「…、俺が、弱いから…」
虚ろな目。時折滴り落ちてくる血。
初めてこの人の闇を見たと思った。
パチパチ、と何かが聞こえる音に目をやると、村など無かったかのようにすべてが燃え尽されていた。
「…っ」
「俺が、弱いから…」
＿＿＿
「あの時のミツやばかったよねえ」
「はは…」
「呼ばれた時、俺も殺されるかと思ったもん」
今では思い出話の1つでしか無いけれど、恐怖を初めて覚えた。
北山さんが背負う見えない闇。
その闇から、どうやったら俺は貴方を救えるのだろう。
貴方は強いと、どうしたら伝えられるのだろう。
＿＿＿
勢いで書いた魔法パロのお話
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 581人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たいちゃんらぶ(プロフ) - ･･にジーン( ;∀;)あぁぁぁ‥好きです･･ゆびわに気づいたたいぴ･･いつか!!!待ってます(*´σｰ｀)ｴﾍﾍ (2018年11月17日 19時) (
レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - (￣ｍ￣〃)ぷぷっ!っと愛おしいし‥会社のエースなのにガヤさんと離れるのやだー(´；ω；`)と潰れるガヤさんにゾッコン(←)な玉ちゃんが大好きです♪サプライズに鳩になるたいぴ可愛い♪俺の胸に飛び込んでおいで！って本気な玉ちゃんにｗｗやっと絞り出したおかえり (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 遠かった春･･( *´艸｀)私‥夜布団の中で目が覚めた時更新チェック･･ついしちゃうんですが‥「春」シリーズだ！！！ と思うとどんなに眠くっても起きて見ちゃう(｀・ω・´)ゞきたやまくんの言葉に真っ赤になっちゃうガヤさんはホント可愛いし‥玉北ちゃんの飲み会は (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 君が壊れる日･･いつもは光の中に身を置いているようなみっくん･･だからこその抱える闇なのかも(´；ω；`)ｳｯ…なんて思ってしまいました。でもそれを見逃さないたいぴが隣にいるなら…涙。ふえーん( ;∀;)… (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 北斗さん» コメントありがとうございます！ 春シリーズ好評頂けて嬉しいです( ；∀；)！ この2人と北山さんことはこれからも書いていこうと思っております！また是非読んで頂ければ嬉しいです！ (2018年11月16日 1時) (レス) id: 05aff8376d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：魚
| 作成日時：2018年9月14日 22時
