2人の短いお話 その2

優しく触れて ページ23

『同窓会』の玉森くんの話


____



「同窓会行きたくないんだよね」



そう俺に珍しく弱音を吐いた上司に、俺はふうん、と何となく同調して見た。




「同窓会かぁ。面倒くさそうっすね」
「やっぱり？タマもそう思う？」
「別に今更会いたい人もいないですしね。
俺だったら行かないっすね」




地元から遠く離れた街で進学したため、成人式すら帰ってない。

嫌な思い出がある訳ではないけれど、そういう建前上の付き合いみたいなものがうざったくて仕方ない。


だからこの出世コースのど真ん中を走る、何にも執着しないような淡白な性格のガヤさんの下で働くのが心地良い。





「で？ガヤさんは？会って気まずい女の子でもいるんすか？」
「別にそういうわけじゃえよ。ただ面倒なだけ」





焦ったように何かを隠すガヤさんに、すぐに面白そうだと�茲が緩んだ。




「うわ、怪しい。絶対高校の時何かあったでしょ？」




ねえよ、と口では言うものの何か物思いに耽るような色っぽい表情を浮かべる横顔に、俺は少しだけドキッとした。






「そんなアンニュイな顔浮かべちゃって。
絶対ガヤさん何かあった。絶対行った方良いっすよ！」





______






そんなことがあったガヤさんとの飲みから数週間後。
ガヤさんは俺がお節介で上司に口を滑らせたこともあり、重い腰を恨めしそうに上げて同窓会へと向かった。




「ふあぁ〜、ねみい」




することねえし、寝ようかな。



週末を共に過ごすような恋人はここ数年いない。
気楽な生活だ。
夜遅くまで残業しても、飲みに行っても、誰にも咎めらることは無い。


でも今死んだら孤独死？


そんなことをぼー、っと考えているとスマホが急に震えた。




「もしもーし」
『お疲れ、お前今どこいんの？』




よっぽど同窓会が嫌なのか、声色がやたらと疲弊しているのが面白い。
ふふ、と笑いを噛み殺して返事をした。




「んー、家ですけど。あれ、ガヤさん同窓会中じゃないの？」
『もういい、帰る。今からお前んちに酒持って行くわ。付き合えよ』





あら、そう来たか。

まるで駄々をこねる子供みたいだ。
時折見せる可愛らしい一面に、からかってやりたい気持ちが湧く。




「ええー？元カノは？」
『だから元カノなんていねえよ、馬鹿』





面白いなあ。
そんなに嫌なら適当に嘘ついて、行かなきゃ良かったのに。




「はいはい、迎えに行きますよ」




車のキーをポケットに入れ、辟易とする上司の元へと向かった。

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