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「おい!待てよ!」
他のメンバーを見ても、話が盛り上がってるところを邪魔するのは申し訳ない。
きっと藤ヶ谷がトイレに行ったくらいにしか捉えていないのだろう。
「あ〜、もう、俺かよ…っ」
チッ、と軽く舌打ちをしてから、玉森を無理やり引き剥がした。
ぐえ、と変な声も聞こえた気がしたけれど、聞こえないふりをして、藤ヶ谷を探しに店を出た。
_______
「…って、帰ってねえのかよ」
タクシーに乗って帰ってしまっていたら、もういっそのこと楽だったのに、意図も簡単に藤ヶ谷は見つかった。
通りから外れた所にあるベンチにぼーっ、と腰掛けている藤ヶ谷に、渋々俺は近付いた。
「おい」
「っ…、びっくりした、」
パチパチ、と瞬きをする藤ヶ谷の目は何故かほんのりと赤くて、少し濡れているようにも見えた。
「……お前、何かあったの?」
声色を変えて、泣いたであろう藤ヶ谷に話し掛けると、また眉間に皺を寄せられ、俯かれてしまった。
分からない。
本当に何を考えているのか、全く分からない。
質問に答えない様子に痺れを切らして溜息を吐くと、藤ヶ谷はビク、と体を揺らした。
「お前何なの?今日、すげー感じ悪い」
「…ごめん」
その声が震えているのが分かり、俯いている藤ヶ谷の顔を覗き込むと、何故か藤ヶ谷は泣いていた。
「…何が言いたいんだよ、泣かれてもわかんねえよ」
その涙に、何故か胸が張り裂けそうになった。無意識にクシャ、とくせっ毛を優しく撫でると、藤ヶ谷は勢い良く顔を上げた。
「え、?」
チュ、と一瞬だけ触れた唇に、俺は何があったのか分からなかった。
「俺、北山が、好きだ」
艶やかな藤ヶ谷の熱を帯びた瞳に、俺は射抜かれたようだった。
「それが、言いたかった、ずっと。何年も。
何年もずっと言いたかった言葉だよ」
柔らかく笑う藤ヶ谷は、何故かまた涙を零していて、俺は何と返せば良いのか分からなかった。
「好きになって、そしたら北山とどう話せば良いのか分かんなくなった。でも話し掛けられると、緊張して上手く話せなくなるし。
なあ、北山。
諦められるまでは、好きでいて良いかな」
ふふ、と笑うその瞳から、また新しい雫が落ちて来る。
「あ、もうひとつ言いたかったことがあった」
誕生日、おめでとう。
そう言ってあまりにも綺麗に泣く君に、俺はどうすることも出来なかった。
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たいちゃんらぶ(プロフ) - ・・にジーン( ;∀;)あぁぁぁ‥好きです・・ゆびわに気づいたたいぴ・・いつか!!!待ってます(*´σー`)エヘヘ (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - ( ̄m ̄〃)ぷぷっ!っと愛おしいし‥会社のエースなのにガヤさんと離れるのやだー(´;ω;`)と潰れるガヤさんにゾッコン(←)な玉ちゃんが大好きです♪サプライズに鳩になるたいぴ可愛い♪俺の胸に飛び込んでおいで!って本気な玉ちゃんにwwやっと絞り出したおかえり (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 遠かった春・・( *´艸`)私‥夜布団の中で目が覚めた時更新チェック・・ついしちゃうんですが‥「春」シリーズだ!!! と思うとどんなに眠くっても起きて見ちゃう(`・ω・´)ゞきたやまくんの言葉に真っ赤になっちゃうガヤさんはホント可愛いし‥玉北ちゃんの飲み会は (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 君が壊れる日・・いつもは光の中に身を置いているようなみっくん・・だからこその抱える闇なのかも(´;ω;`)ウッ…なんて思ってしまいました。でもそれを見逃さないたいぴが隣にいるなら…涙。ふえーん( ;∀;)… (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 北斗さん» コメントありがとうございます! 春シリーズ好評頂けて嬉しいです( ;∀;)! この2人と北山さんことはこれからも書いていこうと思っております!また是非読んで頂ければ嬉しいです! (2018年11月16日 1時) (レス) id: 05aff8376d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:魚 | 作成日時:2018年9月14日 22時