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北山と出会ったのは、取引先との懇親会でのことだった。
半ば無理矢理、上司に出席にされた俺は、見事若い女性社員の餌食となり、囲まれて疲弊していた。
逃げるように隠れた男子トイレで、何をするわけでもなく、洗面台に腰掛けてスマホをいじっていたのが北山だった。
「どうも」
「あ、どうも…」
俺もトイレに行きたかったわけでは無かったので、妙に気まずい。
「藤ヶ谷さん、でしたっけ？」
「へ？」
随分と間抜けな声を出して、後ろを振り返ると、その小柄な男は俺の目と鼻の先にいた。
「うおっ！」
「やっぱりイケメンっすね、藤ヶ谷さん。でもどっちだろ。どっちもイケそうだけど。藤ヶ谷さん、天然でしょ？」
小柄な男が喋る度に息が漏れて、自分の顔にかかる。
かすかに匂う柑橘系の爽やかな香りは、この男の香水だろうか。
「あ、あの、ちか、近いです」
「ん、わりいわりい。つい癖で」
壁に押しやられていた俺は、その男からの拘束を解かれ、スーツの皺をおもむろに伸ばしていると、目の前に名刺が差し出された。
「北山です。よろしくお願いします。藤ヶ谷さん？」
「あ、ど、どうも」
何で俺の名前を知っているんだ…？
にこり、と貼り付けられたようなその笑顔に俺は、質問することは出来なかった。
しかし、懇親会の会場に戻ってから、ずっと北山が俺の隣で会話をしてくれたおかげで、女子社員が寄ってくることは無かった。
「あの、今日はありがとうございました」
「何が？何かした？俺」
「・・・いや、北山さんとお話しできて楽しかったので」
「あ、そう。それなら良かったー。
じゃあこのまま二人で飲み直しましょうか」
「へ？」
二度目の間抜けな声を披露して、俺は気付けば北山と個室の居酒屋に入っていたし、気付けば終電を逃していたし、気付けばホテルにいたし、そして何故かベッドに押し倒されていたのだから不思議だ。
「あの、これは、いったい・・・」
「ん。今から藤ヶ谷さんを頂こうとしているところ」
「ちょ、ちょっと、俺、そういう経験もそっちの気も無いんですけど」
「大丈夫。俺が良くしてあげるし、これからその気にさせるから」
なんて飛んだジャイアニズムだ______
ぎらり、と射抜かれるような北山の瞳に俺は成す術も無く、今まで感じたことのない快感を知った。
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たいやき(プロフ) - 藤北目当てで読んだのに、『春』が１番好きで、何度も読み返しています！！あまり玉ガヤのBLは意外と読んだことがなかったので新鮮だったのと、『春』の藤ヶ谷くんがどたいぷすぎました。これからも頑張ってください！ (2019年10月13日 1時) (
レス) id: 2edd79c1bf (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - まきさん» コメント頂いていたのにお返事遅れてしまい大変申し訳ありません(*_*)！ 短編の方で思いついた時にでも書いていこうかと思っておりますので、是非楽しみにしていただけると嬉しいです！コメントありがとうございました！ (2018年10月22日 17時) (レス) id: 05aff8376d (このIDを非表示/違反報告)
まき(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます。以前に一回読んで、また読みたくなってしまい、読み返しました。とてもかわいい藤ヶ谷さんを見れて、楽しく読ませて頂いてます。『春』の続編を勝手ながら期待しております。 (2018年9月19日 11時) (レス) id: 0555875bff (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 白雪さん» コメントありがとうございます！私の中で藤ヶ谷さんは受けだと思っていて笑 北藤、玉ガヤ大好きなんです笑 そう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございます！ (2018年8月5日 13時) (レス) id: 99aac380a8 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - わたリンさん» コメントありがとうございます！お返事遅れてしまい大変申し訳ありません( ；∀；)！春の続編いつか書きたいと思っておりますので、楽しみにしていてください！ (2018年8月5日 13時) (レス) id: 99aac380a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：魚
| 作成日時：2018年4月16日 21時
