身支度の途中に…… ページ23
「と、いう訳でだ。きちんと服とかの泊まり込みで訓練受け続けるのに使いそうな物は用意してからいけよ。」
「はい。分かりました。ではこれから準備して、支度が整い次第向かってみます。」
「おう。気をつけろよー。」
「また帰ってきたら顔出せよー。」
騎士団の人達に思い思いの言葉で見送られながら訓練場を後にする。そのまま自分が借りている部屋に戻ると一つ大事な事に気がついた。
「うーん……荷物纏めるって言ってもそもそもこの世界に来てから僕の持ってる服って最初に着てた服の他に魔族にとっての一般的なデザインの服が上下セットでいくつかしか無い。それに荷物を入れるバッグが無いんだよなぁ……。この世界に来る前の感覚で旅行用バッグある気でいたなー。さーて……どうするべきかな?」
しばらくベッドの上に並べた服を眺めながら唸っていると、後ろから声をかけられた。
「お困りの様ですね、流真。そんな貴方が求めているのはこの旅行用バッグではないですか?」
後ろに振り返ると、レナさんが革製の大きなバッグを持ってニコニコと微笑みながら立っていた。
「あ、そうです。丁度荷物をまとめようにもそんな感じのバッグが無いことに気づいて途方に暮れてたんですよ。」
「そんな流真に朗報です。ここに旅行用バッグを新調して使わなくなった方をどうしようかと悩んでいる一人の乙女がいます。乙女は思い出の詰まったこのバッグを捨てたくはありませんがかと言ってクローゼットの奥深くに眠らせるのは忍びない、と考えているようです。さて、貴方はどうしますか?」
悪戯っぽく笑いながら芝居がかったように話すレナさん。僕は一瞬驚いた顔を晒してしまったが、咳払いを一つしてこう返すことにした。
「すみません、もし貴女さえよろしければそのバッグを僕に引き取らせて貰えませんか?」
レナさんはバッグを持ってない方の手であざとく顎に手を添えて悩む素振りをすると、口を開いた。
「及第点には及ばず、といったところですかね。まあ最終的には譲るつもりだったので良しとしますかね。」
「やっぱりわざわざ持ってきてくれるってことはそういうことですよね……。」
「確かに譲ってはあげますけど及第点が取れなかった貴方にはー?なんと私のストレス発散の為のおもちゃになってもらいます!」
「それっていつも通りでは?」
「まあそうとも言いますね。では!」
その後バッグを渡すとレナさんは部屋から出て行った。一体何がしたかったんだろう?
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作者名:めがねとかがみ | 作成日時:2020年9月15日 23時