魔王の側近の仕返し ページ19
たまにレナさんにからかわれ続けながらも僕は一ヶ月ほど同じような日常を繰り返した。そしてようやく筋力が木剣で素振りをできるようになる程には付いてきた。
「二百四十九!二百五十!……疲れた。やっぱり木剣じゃ棒より振るのが大変だなぁ。思うように動かせてないから余計な力が必要になってるんだろうけどこればっかりは独学じゃ中々習得できる技術じゃ無いと思うし……。あ、そういえば紹介状貰ってたっけ。そろそろ本格的に人に学んでみようかな?」
「私もそれが良いかと思いますよ。」
木剣を置いてベッドに背を預けて休んでいると、もう聴き慣れた声が返事をしてきた。
「またノックもせずに……これで何度目ですか?レナさん。」
「ん〜十回目からは数えてません!」
レナさんの方に向き直ってそう聞くと、レナさんはキリッという擬音が聞こえてきそうな表情で言い切った。
「そうですか……でも魔王様の側近がそう言ってるんだからやっぱりここからは独学じゃ厳しいですね……。」
ふと僕がこう呟くとレナさんは分かりやすく頬を膨らまし、
「魔王の側近って呼ばれるのは少し気に入りませんね。面白くないのでこうしてやります。」
「へ?うわっ!」
そう言うが早いか目にも留まらぬ速さでベッドの上に移動すると僕の首根っこを後ろから掴み、
「セイッ!」
という掛け声と共に僕を宙返りするような軌道で無理やり頭からベッドにダイブさせる。
「ゴフッ……!?フガッ!」
うつ伏せの姿勢から起き上がろうとした僕に、追い打ちとばかりに掛け布団を頭に被せてきた。そしてそのまましばらく僕がもがいていると満足したのか急に視界が開けてニコニコと満面の笑みを浮かべているレナさんが目の前にいた。
「仕返しにしてはやりすぎじゃありませんか?」
「私が気兼ねなく感情をオープンにしてあげてるんですからむしろ喜んでも良いんですよ?」
「えぇ……。というかレナさん外では感情あんまり出してないんでしたっけ?」
「はい。最初に会った時を思い出してみて下さい。」
「最初……」
言われたとおりにレナさんと初めて会った時を思い出してみる。
「あ、確かに魔王城で初めて目を覚ました時ルナ様の後ろに無表情で立ってましたよね?」
「そうでしょう?魔王の側近というのも楽じゃないんですよ。下手に隙を見せると野心旺盛な奴らが面倒な事に難癖をつけてくるんです。」
「だからといって僕はおもちゃですか……。」
「はい♪」
……理不尽だ。
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作者名:めがねとかがみ | 作成日時:2020年9月15日 23時