カノジョ。 ページ1
鈍臭くて気が弱くて、優柔不断。
小さい頃、どこにもいいところがない私だったのに、侑はいつだって私を気にかけてくれた。
林檎と梨で迷った時は「俺が好きなんは林檎やから林檎にし」とか、そんな風に言ってくれる人だった。
治も治で優しかったが、侑のものとはまた違う何かがあって。
私は「侑だから」彼のことを好きになっていた。
私が好きな食べ物は侑の好きな食べ物。
私が好きな動物も、侑の好きな動物。
大きくなるにつれてそういう風に自分を主張できないことは良くないことだと、大人だけでなく友人から言われることも増えたが、私はそれを変えようとはしなかった。
侑の意思が自分の意思であると思っていたから。
幼い頃の記憶や感覚というのは怖いもので、私にとって「普通」になってしまえば、彼への執着も無意識のうちにしていたことになるのだ。
私は侑のもの
そんな訳のわからないことを、確証も関係性を表す特別な名前もないくせに常日頃思っているのだから私はとことんダメなんだと思う。
私は侑に執着しているし依存しているし、傲慢なことに彼にとっても私が1番だとそう信じ込んでいたのだ。年月と彼の対応という形のないものを頼りに。
だから、
だから
「いま、なんて」
「カノジョ。できたから今日からは一緒に帰られへんわ」
誰か知らない女が侑のものになるのも耐えられなかったし、彼の中の所有枠が私以外の女で埋まるのも、彼の一番が私ではなかったことも、信じられるはずがなかったのだ。
「そ、っか」
「おー」
侑の目はなにを考えているかわからない。それを悟らせないように彼がわざとそうしているからかもしれないが。
視線が絡んでも、私の視線がスクリーンを突き抜けているような、掴めない感覚。
「おめでとう言うてくれへんの」
しょんぼりと眉を下げるから。
それは「おめでとうと言って」という彼からのお願いに見えてしまって、私は彼が望むように動くしかなかったのだ。
「おめでとう、」
心では1ミリもそう思っていないくせに。
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ぴーなつ(プロフ) - ゆーり。さん» ゾクゾク感を感じていただけたのであれば幸いです( ˘ω˘ )!嬉しいコメントありがとうございます! (2020年4月11日 11時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーり。 - 読めば読むにつれて鳥肌が止まらず。。。ほんとにめちゃくちゃゾッとしました。でもそれ以上に言い表せない高鳴りが!!!面白かったです!!!! (2020年4月11日 9時) (レス) id: 56b835e328 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーなつ(プロフ) - (名前)さん» この作品で1番の黒幕と言いますか、操り糸を自在に動かしていたのは治だった、という事実をインパクトをもってお伝えしたかったので、そのようにコメントいただき嬉しいです( ; ; )!ありがとうございます (2020年4月9日 21時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - めちゃくちゃ良くてびびりました!!特に最後の二ページに鳥肌が止まらないです!夢主はちゃんと恋になったけど治は戀...。予想していない展開でした、とにかく最高です!!! (2020年4月6日 2時) (レス) id: 678e1d11d1 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーなつ(プロフ) - こはるさん» こははははははる!!!ちょっと自分でもびっくりするくらいドロついて収集つかなくなりそうになりながら無事終わらせました( ˘ω˘ )! ありがとう! 侑はドロドロがとんでもなく書きやすい!!笑 (2019年10月18日 23時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴーなつ | 作成日時:2019年9月18日 22時