#05 : 黄色い付箋 ページ5
.
『はい！これ物理と微積のノート』
「ありがとう」
1人中庭で簡易おにぎりを食べる習慣に内村くんが居る事は当たり前になっていた
元々板書はきっちりとる方だったから、教授の話をメモする事もそこまで苦ではない
それに、ボランティアでノートテイクをしていると言えど、内村くんはお礼と称してお弁当をくれる
「今日は紅鮭だって」
『すご！今日も美味しそ〜！』
内村くんのお母さんは料理教室をしているらしく、そのお弁当は毎回豪華なおかずで溢れていた
味わってゆっくり食べていると、先に食べ終わった内村くんは私の渡したノートを手に取った
真剣な表情で読むもんだから何かおかしな事でも書いてないか、誤字をしていないか不安になる
「ねぇ、これなに」
不安的中？
内村くんはノートをこちらに向けそこに貼られた青い付箋を指差した
『あ、それね！講義内容とは別の事だから付箋に書いといたの』
説明しても尚、頭にクエスチョンマークを浮かべる内村くん
まぁ初の試みだし仕方ない
付箋に書いたのは本当に些細な事
“教室後方で深田達がボードゲームやってた！笑
教授の機嫌が悪かったのは多分そのせい
真面目に受けてないから怒ってるんだと思う”
『ノートテイク慣れてきたからさ、教室の雰囲気とかも伝えられたら良いなぁって思って』
「そういうこと」
納得したのかまたパラパラとページをめくり出す
「これも？」
そう言って次に見せられた付箋
“大学前のパン屋明日から半額
教授のオススメ、メロンパン”
『…それは、単なる私のメモ』
慌てて教室を出たせいで間違えたのかもしれない
本来私の手帳に貼るべき黄色の付箋が何故か内村くん用のノートに貼られていた
反応のない内村くんに不安になって顔を上げる
それなのに私以上に不安な表情がそこにはあった
「ごめん、なんて言った？」
あ、聞き取れなかったんだ。って
『私の節約用メモって言ったの、でも恥ずかしいからコレは聞かなかった事にして』
半額情報をメモする女ってどうなの
羞恥心を堪えて早急に付箋を救出
「ふふ、分かった。聞こえなかった事にしておく」
『なんか都合いいね』
「でしょ？」
そう言って内村くんは柔らかく笑った
内村くんと居る時間は結構好き
私の周りは自分も含めてうるさい人しか居ない
いっつも馬鹿騒ぎして時間にはルーズめ
だから、内村くんの醸し出すゆったりと流れる時間は新鮮で何処となく心を落ち着かせてくれた
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 670人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
徒歩５分(プロフ) - 更新頻度も不安定なものでしたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。やっとこちらが完結したのでノマエンの方も再更新したいと思います。 (2022年1月13日 2時) (
レス) id: 045302e95b (このIDを非表示/違反報告)
徒歩５分(プロフ) - 作中には書いてませんが深田くんは最後まで主人公を想い続けていました。それ故に想いを伝えることなく内村くんの背中を押した。伝えても主人公を悩ませてしまうと分かっていたからです。 それが1番愛が重い気がしたので、という完全なる私情ですがね🙌 (2022年1月13日 2時) (レス) id: 045302e95b (このIDを非表示/違反報告)
徒歩５分(プロフ) - 話数も文字数もいっぱいになってしまったので此処であとがき失礼します。 どうしても50話で終わらせたくて最後に詰め込んだ形になってしまいましたがお話はこれで完結です。 (2022年1月13日 2時) (レス) id: 045302e95b (このIDを非表示/違反報告)
徒歩５分(プロフ) - 結羽さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けてとても嬉しいです (2022年1月13日 2時) (レス) id: 045302e95b (このIDを非表示/違反報告)
結羽 - コメント失礼します🙇♀️更新楽しみに待っています。 (2022年1月6日 21時) (レス) @page43 id: dae3c1a76c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：徒歩５分
| 作成日時：2021年7月18日 15時
